藤堂高虎の縄張り

文字数 809文字

「高虎、この施設配置でいい縄張りないかな?」

 真田幸村は築城の名人と呼ばれる友人の藤堂高虎に温泉施設周辺地形の写真を送ってメールしてみた。

「ああ、こんなんでどうだ?」

 数時間後、確認の電話と共にスマホのメッセージアプリ「LIME」に画像が送られてきた。
 手書きの縄張り図の写真だが、一見、優美な庭園にみえるが、橋などを落せば七重の堀をもつ複雑怪奇な要塞にもみえた。

「すまんな。でも、ちょっと作風変わってないか?」
 
「清正の意見も取り入れて、ゲリラ戦とかやり易くしてみたんだ」

 清正とは加藤清正である。
 藤堂高虎と並ぶ築城の名手である。熊本城、名護屋城、蔚山倭城、江戸城、名古屋城などの名城を築城した。
 高虎は掘りや石垣を重要視したシンプルな構造の築城を目指した。
 それに対して朝鮮出兵の激戦を経験した清正はゲリラ戦を想定した複雑で入り組んだ縄張りを好んだ。
 

「清正と旅行中?」

「GWは熊本城とか見せてもらって、ちょっと世界観が変わってしまってね」

「なるほどね。そうだ。三成も来てるんだけど、温泉でも入りに来ない? さっき連絡したら左近も来るようだし」

「島左近殿と石田三成殿か。それは行きたいな。清正、どうする?」

 三成と清正は朝鮮出兵以来、仲が悪く、関ヶ原で東西に分かれて戦い犬猿の仲だといわれているが、実は以前は仲が良く屋敷を行き来していた。

「ああ、行くそうだ。一部屋二名予約しておいてくれ」

「了解。予約しとくよ。毎度あり」

 幸村の電話を切った高虎が清正に視線を向ける。

「島左近、石田三成に真田幸村のいる難攻不落の温泉施設かあ。合戦でもはじまりそうだな」

 高虎が妙に嬉しそうだ。

「それは参戦しないといけないな」
 
 清正もにこりと笑った。
 二人は人型機動兵器が搭載されたボトルキャリアーと呼ばれるトレーラーで鳥取県を目指すことにした。
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