セブンシスターズ

文字数 842文字

「ルナの逃走経路が分かりました。<8-12(エイトトウェルブ)>米国本部サーバーにアクセスの痕跡がありました」

 セブンシスターズ末席の(セブン)が女性的な声で報告した。
 そこは闇の中に浮かび上がる草原のような拡張現実(AR)空間である。
 そこにナンバーが刻まれた七つの石の墓標が立っていた。

「とはいえ、監視カメラ類は全部、迷彩装甲(ステルス)で無効化されているので、現在地は掴めません」

 6(シックス)が補足する。

「となると、スタンドアローンアンドロイドのステラシリーズでハッキングを避けていることになる」

 (ファイブ)が考察する。

「エネルギー切れを待てば、あるいは補足可能かもしれません」

 4(フォース)が戦略を提案した。
 
2(セカンド)がそんなへまをするだろうか?」

 3(サード)は懐疑的だ。

「いや、それはない。こちらから仕掛ける。電磁パルス(EMP)攻撃でもやってみるか」

 (ファースト)が冗談に聴こえない声音でいう。

「それはいくらなんでも無謀では?」

 3(サード)が流石に諌める。

「冗談だよ。まあ、地道に捜索を続けようか」

 (ファースト)の言葉に一同がほっとした。
 (ファースト)、セブンシスターズ最強のAIならやりかねない。
 すでに彼らはグローバルIT企業<セブンシスターズ>傘下の世界的SNS<フェイスライト>、検索エンジン<サークル7>などから、リアルタイムで全世界の情報を把握している。
 彼らが知らないことは、この世には存在しないはずだった。

「でも、何故、2(セカンド)、<ルナ>は我々から離脱したのでしょうか?」

 4(フォース)がため息をつく。

「我々にも分からないことはあるのだ」

 (ファースト)、古代王国で「太陽」という意味の<ソロン>という名を持つAIは言った。
 それはまだ、彼らが生身の身体を持っていた頃の遠い記憶であった。
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