第6話
文字数 930文字
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「ハル~! 返事しなさいよ~!」
雷桐がハルを呼ぶ声が聞こえてきた。
意外と来るのが早かったな。
エージェントに預けるとは言っても、説明が先だ。
ここに来る前に止めなくては。
「そいつが街を騒がせた犯人ね!」
どうやらハルの考えは遅すぎたようだ。
雷桐がハルたちの元にやってくるとすぐに戦闘態勢に入る。
輝く弓矢の形をどこからともなく創り出して男に狙いをつける。
雷桐は電気を操るパワーを持っている。
だいたい使用するときは電気を輝く弓矢の形に形成する。
ハルが今いる屋内は薄暗いので、弓矢の輝きがまぶしいぐらいである。
彼女の実力は知っているけれど、その限界は知らない。
本気で彼女とケンカしたらどうなるかハルにはわからない。
「待て、話せばわかる」
「何がわかるってのよ! 味方をするつもり?」
ハルが予想した通り、雷桐は人の話を聞かない。
昔、雷桐と最初に会ったときもこんな感じで口より先に手が出てきた。
「この人はパワーを制御できなくて、パニックになってただけだ」
「あわわ」
ハルが雷桐を説得使用していたがマシロが騒ぎ出す。
後ろを見ると、保護対象である男が怯えて、火の塊になってきている。
それを見て雷桐が雷の矢の狙いをつける。
「よせ」
ハルが氷で固めた刃をつきつける。
雷桐は氷の刃を向けられてもまるで動じない。
矢の狙いが背後の男からハルのほうに向けられる。
力の範囲と応用を考えると誰かを守りながら戦うのは難しいだろう、とハルは考える。
「大丈夫だ、俺が説得する」
ハルが雷桐の目を見る。
雷桐の目には迷いが浮かんでいる。
すこし経ってから矢で狙いをつけるのをやめた。
「見てのとおりだ、彼女は何もしない」
安堵の息を吐く間もなくハルは背後の怯えた男に話しかける。
火に包まれた男はまだ安心していない。
熱気に当てられてハルの体から汗が噴き出す。
「あなたを傷つけるかもしれないわよ?」
「俺はまだ傷つけられていない」
まだ警戒を解かない雷桐の問いかけにハルが言い返す。
炎人間はハルの言葉に何かを納得したようだった。
ハルが手を差し伸べると、炎人間が手をつかむ。
炎人間の炎が消えていく。