第7話
文字数 1,006文字
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「何かあったら私かハルに連絡して」
そう言って雷桐は炎人間ではなくなった男をエージェントのスタッフに引き渡した。
あれから雷桐が本部に連絡をして人を寄越した。
エージェントのスタッフがすぐに到着して男を保護した。
エージェントの支援スタッフは現場を偽装したり、混乱を収拾したりする。
スタッフの活動は様々である。
スタッフというが見た目は黒塗りのワゴンに乗って黒スーツを着た男たちである。
ハルも彼らのことは見慣れているが、まっとうな職業の人間には見えない。
「これからどうなるんだよ?」
「制御装置をつけて、パワーのコントロールを学ぶことになる、と聞いた」
マシロの問いかけにハルは答える。
もはやハルたちにはできることがない。
三人はエージェントの車が去っていくのを見送った。
「ありがとう、提案をうけいれてくれて」
帰り道の途中でハルが雷桐にお礼を言う。
雷桐が決断をして攻撃をやめたことに対しての感謝である。
攻撃をやめなければ、まだ事件は続いていたにちがいない。
「別にいいわよ。相手が悪人だったら、あなたごと撃ち抜くつもりだったし」
雷桐がハルのほうを見ずに前を向いたまま答える。
彼女が怒っているのか呆れているのか読み取ることができない。
ハルも雷桐を見るのをやめて前を向く。
「ひどいなあ、そんなんだからこんな場所に派遣されるんだよ」
雷桐の物騒な意見にマシロが文句をつける。
三人の歩くペースは雷桐に合わせているので速めになっている。
歩幅の合わないマシロが早歩きになって文句を付けたがっていた。
「マシロ、あなただって今回は活躍していないじゃないの」
雷桐がマシロに近づいて言い返す。
今にもつかみかかりそうだった。
マシロが瞬間移動の力を使って言い返す雷桐から逃げる。
マシロは逃げ回っていたが、雷桐も慣れたものですぐに捕まえてしまった。
それでもマシロは諦めずに暴れたので、雷桐がおとなしくさせようとする。
いつのまにか取っ組み合いを始めていた。
そんな猫と取っ組み合いをしている雷桐を見て、通り過ぎていく人たちが笑っている。
「見た目で判断するのは良くないぜ」
「そうよ」
さっきまでケンカしていたのをやめて声をそろえてぼやく。
両者の意見が合ったようだ。
「本当に見た目は大事だな」
ハルは呆れながら言った。
END