第2話 賞が全部なくなる!ひたすら持ち込みの日々の果てに……

文字数 1,767文字

自費出版を蹴ったわたしは、「三国志より熱を込めて」をkindleで出版し、新作を書き続けました。この時書いたのは「あなたの星座の物語」「曽我兄弟より熱を込めて」「山中鹿之介と尼子十勇士より熱を込めて(最初は新講談山中鹿之介でした)」などです。

出来上がった作品は賞に送り続けました。送り続けたといっても、歴史エッセイを受け付けてくれる賞は、一年に二回しかなかったのですが……。

そんなある時、トンデモナイことが起こったのです!

何と立て続けに、出版社が賞そのものを終わらせてしまったのでした!

青天の霹靂とはまさにこのこと!わたしは慌てに慌てました。賞がなくなってしまったら、どうやって出版社に作品を見てもらえるのでしょうか?

……残る手段は「持ち込み」です。

「ブログをつけたり、kindleを出したりして、編集者の目に留まるのを待つ」という方法もありますが、そんな流れ星が当たってくれるのを待つような、気の長いことは言ってられないですからね。

それからというもの、わたしの持ち込み人生が始まったのでした。まずは大手のS社やK社やT社などに企画書と原稿を送りつけました。それから一冊でも歴史の本を出している出版社があったら、片っ端から送ったのです。封筒で送ったり、電話を掛けたり、メールをしたり……。大体、五十社は当たってみたでしょうか?

しかし、やってみて初めて知ったのですが、今どきの出版社って、「持ち込みは一切受け付けておりません」がほとんどなんですね。大手なんかはまず100パーセント「お断り」です。(それでも勝手に送ったのですが)

その理由は、「とにかく大量に原稿が送られてくるから、人手がいくらあっても足りない」のだそうです。「だから持ち込みしないで、公式に行ってる賞に出せ」と。そりゃ分かるんですけどね……。じゃあ、小説じゃない作品はどうしろと?受け付けてくれる賞が一つもない人間は、出版社に見てもらうことはできないのでしょうか?

持ち込みされた企画書と原稿は、噂によれば「また来たよ、企画書。誰が見るか!」と、そのままゴミ箱へポイッと捨てられるのが九割以上なんだそうです。

でも、九割以上ってことは、残りの数パーセントくらいは見てもらえる可能性があるのかも……。1パーセントでも可能性があるなら、送り続けるしかありません。

この頃の状況は、例えるなら何にもない空間に、ひたすら石を投げ続けるようなものでした。全く手ごたえなし。封筒で送ったものは、返事がないのが当たり前。電話は「持ち込みを……」と言った瞬間に切られる。メールは自動返信メールすらないのがほとんど、という有様。(自動返信メールくらい、機能つけてほしいものです)

たま~にですが、返事のメールを送ってくれる出版社もありました。でもその文面は「現在は冒険ができない。売れると分かっている作家の作品しか出せない」と。

「冒険しようとしないから、出版不況になるんだ。分からんのか!」

と、一人でスマホに八つ当たり。知らない人が見たら完全にヤバい奴です。でも、超人気作家の作品だけ出して、新人を発掘しようとしなかったら、業界として終わってしまうと思うんですけどね?出版社は自分で自分の首を絞めているのでは?

本当に手探り状態。ただ救いはkindleとブログの存在でした。わたしは全くの無名でしたが、kindle本は時折売れましたし、ブログ(歴史のブログです)の方は徐々に徐々にアクセス数が増えていって、確かな反応が返ってくるようになったのです。もし、この二つがなかったらココロが折れていたかもしれません。

しかし、一念岩をも通すとは本当の事です。ある晩、すっかり疲れ切っていたわたしの元に、一本のメールが届いたのです。

「ご応募いただきましたご企画を協議させていただきました結果、弊社から商業出版で進めることは難しいという結論になりました。弊社のグループ会社であれば商業出版できるかと存じますがいかがでしょうか?Tという会社となります」

……この時の感激は、とても言い表す事は出来ません。ついにやった、光明が差した、という感じでした。

こうしてついに夢の商業出版にたどり着いたわたしでしたが――でも「夢」で終わらせた方が良かったかもしれません。この後、わたしは見たくなかった現実を見ることになるのです。
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