第7話 「あけがらし」

文字数 1,186文字

 「白飯の友」は数あれど、この「あけがらし」なるモノは、なかなかにあっぱれじゃ!(誰?)

 こやつがあれば白飯が止まらん。茶碗に三膳は、一気呵成に箸がすすむのじゃ。(だから誰?)

 ごはん大好きの私。食生活の基本はもちろん米食です。パンもパスタも好きだけど、やっぱり一日のどこかでお米を食べないと気が済まないんですよね。皆さんはいかがですか?
 白飯をそのままで、というのももちろん好きですが、なにかしら「飯の友」があればなおのこと嬉しいですね。いわゆる「おかず」ではなく、梅干しとか納豆とか、シンプルに白飯に添い遂げるお役目を果たす「何か」。新しいお店で、誰かからの差し入れで、旅先で……今まで知らなかった新たなる「何か」に出会えたとき、私は「生きててよかったなぁ~」と率直に思うものです。

 「あけがらし」というものとの出会いは、山形県の飯豊町にある道の駅でした。地域の物産品コーナーに置かれていたんですよ。「なんじゃこりゃ?お味噌か?」と思いつつ手に取ると、どうやらお隣りの長井市にある、老舗のお醤油の蔵元で製造している「飯の友」らしいということがわかりまして。もとは、この蔵元さんの家中で祝い事のときにのみ食されてきた、門外不出の味だったそうな。へぇ~。物珍しさから、お味のほうは正直あまり期待もせずに一つ購入しました。

 旅から戻り、翌日の朝食でいただくことに。もちろん炊き立てごはんとともにです。
 原材料を見ると、「米麹、芥子、麻の実、生絞り醤油、三温糖」。うむ……味加減がまったくわかりませぬ。そこで恐る恐る、同時に興味津々で、スプーンでちょびっとすくってペロリ。

 麹の風味と塩味がしっかり、と思ってたらピリッとした辛さもあってほんのり甘みもあるなぁ。これ、このままちびちびと食べててもいいなあ。個性があってとっても不思議な美味です。

 それでは、白飯さんとご対面していただきましょう。お茶碗の炊き立てごはんの山の頂点にちょこんと乗っけて、瞬間、食欲をそそる香りが立ち上りました。「こりゃいける!」と確信して一口……はい、間違いございませんでした!決まりですねこれは!うまい!ビールの一気飲みならぬ、白飯の一気食いをキメてしまいましたよ(至福)。
 その日はお休みで一日家にいたので、朝昼晩の三食、「あけがらし」でいただきました。こんなペースで食べていたものですから、減りも早い早い(笑)最後の白飯一杯を食べ終わったとき、すなわち「あけがらし」がなくなったとき、なかなかの喪失感を抱いたのを覚えています。この唯一無二の味……今度は作り手の蔵元さん(建物が文化財に指定されているんだそうです)にお邪魔して手に入れようと思います。ネット通販だとありがたみも味もそっけもないのでね。

 不思議な美味「あけがらし」との再会が、今から楽しみでたまりませぬ! 
 ごちそうさまでした。



 
 

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