第12話 甘)「ぽっぽ焼き」

文字数 1,602文字

 私は「産直」とか「道の駅」なるものが好きでして、知らない土地に行ってそれらを見かけるとついつい立ち寄ってしまいます。その土地ならではのものに触れることができ、何より食いしん坊の私は、知らない野菜や食品なんかを見つけると心躍ります。
 気になるものはなるべく買い求め、お味を確かめることにしています。「あのとき食べとけばよかったー!」なんて後悔したくないですからね~。私の旅は自動車旅なので、荷物は増えてもぜんぜんOK。だから気兼ねなく、気になる美味しそうなものを購入しちゃいます♪我ながら、食べることに貪欲だなあ(笑)

 新潟県の北部、関川村を旅していたときのこと。とある道の駅にフラッと立ち寄りました。その道の駅がある関川村は米どころであり、お米と日本酒の品ぞろえが豊富でした。なにげなく売られていた「塩むすび」が目を剥くほど美味しかったですし、清流・荒川の恵みである「天然アユの塩焼き」も絶品でした。
 施設内を一通り堪能し、お米をはじめとしたおみやげショッピングも満喫し、重い荷物を手に車まで戻ります。「いや~いい道の駅だったなあ♪」なんて思いながら車を出そうとしたとき、施設の外の露店が目に入りました。
 そこには「ぽっぽ焼き」なる看板が。
 ぽっぽ焼き?なんだろう?小心者の私は車内からしばらくの間、その露店に立ち寄るお客さんとお店の主をこっそり観察してました。

 店主さん、何かを紙袋に入れて、お客さんに渡してるなぁ。
 
 お客さん、袋から取り出した茶色いものを口に入れてるぞ。とりあえず食べ物みたいだな。

と、ここまでわかった時点で、つまり、「ぽっぽ焼き」とは「私の知らない食べ物」だと確信した段階で、いそいそと車から降りてその露店へ一直線。なんとも現金な人間だなあと自分で呆れます。
 その露店に近づくとふわりと甘い、いい香りが漂っていました。
 
 「ぽっぽ焼き」とは甘もんか!
 
 私の期待が一気に膨らみました。注文は10個から20個、30個と段階を踏んで頼めるようで、私はとりあえず最小ロットの10個を発注。銀色の寸胴容器から取り出される茶色く細長い、どら焼きの皮のようなもの。ほんのりと温かい。これが「ぽっぽ焼き」なるものか。どれどれどれ~。せっかくだから広場に面したベンチに腰掛けていただきました。
 一口かじってみて、しばらく沈思黙考。やばい!確かに甘もんだけど、これといった目新しさがない!「甘さ控えめで、もちもち感の強いどら焼きの皮」といったところですな。うん、実におとなしい甘もんである。食べながら、ぼーっとしてました。

 気づけば手元にあった10個の「ぽっぽ焼き」が無くなってました。
「あれ?もうないの?そんなに食べたっけ?誰か勝手に食べてない?」
 いやいや。間違いなく、食べたのは私しかいないんです。でも、そんなに食べたっていう感じもなく……つまりは飽きることなく食べ尽くしちゃったんですね。

 なんだかんだ言って、美味しかったんですよこれ!
 好きになっちまってたんですよこれ!
 
 もちもち食感のうえ素朴でやさしい味で、まさしく「いくらでもいける系」ですな。こういうの大好きです!
 おとなしそうに見えて、実はとんでもない魔性を秘めている「ぽっぽ焼き」……これはなにげに危険な甘もんですぞ!どうか油断めさるな!中毒性がありますのでご注意を!
 
 その道の駅を離れるとき、私の車の助手席には「ぽっぽ焼き」が10個入った紙袋が、ほんのり甘い香りを放ちながらちょこんと座っておりました。しばしの間、旅のお供になっていただこうと思いまして、追加でお招きした次第です(笑)まあ、なぜかすぐにいなくなっちゃいましたが(泣)(←お前の食べるペースしだいやないけ!)
 またどこかで出会ったら、スタートは20個からにしたいと思います。まあ、余裕で食べちゃうと思いますが(笑)
 
 おいしかったです。ごちそうさまでした。
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