第10話 甘)ばあさまの手作り水ようかん

文字数 1,119文字

 私の甘もんの最初の記憶が、この、おばあちゃん手作りの「水ようかん」。

 もちろん、水ようかんが食べられるようになるまでは、つまりは赤ん坊から幼児くらいになるまでの過程では、母乳やすりおろしりんごなどをはじめ、いろんなものを口にしてきたはずなんです。でも、「甘いもの、美味しい!」ってはっきり認識しながら食べたものは、間違いなくこれなんですよね。

 梅干しを作ってたおばあちゃんが手作りする水ようかんは、私の記憶だと確か毎年6月くらいから登場していたような……というのも、私の地元では毎年5月20日前後の三日間に渡って、市をあげての大きなお祭りがあるんです。そのお祭りの前に食べた記憶はないので、多分その頃かなというわけです。
 そのお祭りが終わって、そろそろ暑くなってくるかなぁとか思い始めたある日、小学校から帰って真っ先に冷蔵庫を開ける(毎日の習慣です)と、その中に50㎝×30㎝×5㎝くらいの大きなバットが入っているんです。それを取り出して見て、はい、確認しました!「今年も来たー!」と、私は心の中で叫びます。

 大きなバットいっぱいの、水ようかん。まだカットもされていない「一枚もの」です!

 私はその涼しげで滑らかな表面をうっとりと眺め、このまま直箸ならぬ「直スプーン」で「一枚」いっちゃおうかなと、何度も思ってはギリギリのところで踏みとどまるのでした(笑)しかも、毎回(←成長なし)。
 仕方なく、適当に細長くカットして、お皿に移していただきます。このおばあちゃんの水ようかんは、舌触りは滑らかなんだけど食感は固めで、しっかり甘いのが特徴。スプーンで割ろうとして表面に当てると、スッとスプーンが入ることはなく、若干の手ごたえと反発力があるんです。色味は薄目なんですが甘さは「きゃしゃ」ではなく、人によっては甘すぎると感じるかもしれませんね。練りようかんほどではないにしろ、固さも甘さも本当に「しっかりしてる」って印象で、「食べてる感」があって私は好きでしたね~。もちろん、自主的におかわりをば。
 当時の私は今より甘いものに強く(?)、けっこうな量を食べても、お茶とか水とかが欲しくなるということがなく、ひたすら食べ続けられました。まったくもって何の自慢にもなりませんが(笑)
 確か、秋になって梨が出回るころまで作ってくれていたおばあちゃんの「水ようかん」。結局「夢の一枚食い」は果たせませんでしたが、いつも満足満足♪でした。もう一度食べたいなぁ。

 それにしても、おばあちゃんはいつの間に下ごしらえして準備してたんだろう?いつも、突然でき上った状態で冷蔵庫に入っているのでした。これまた謎です。

 おばあちゃんありがとう。ごちそうさまでした。
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