第9話 ばあさまの梅干し

文字数 1,032文字

 うちは父が婿であるため、私が育った家は母の実家です。最大で9人家族(犬含む)だった我が家。毎日わちゃわちゃ暮らしてたのが懐かしいですね。
 2011年に93歳で旅立った、私の母方のおばあちゃん。食べることに関して言うと、昔の人だからか、どこかで買ってきたものを食卓に並べるということはせず、自分でいろいろ作る人でした。 
 その中で特に私が好きだったのが、毎年大量に作る梅干しと、6月ごろから気が向くと作り始める水ようかんでした。
 この梅干しについて、幼かったときの記憶を辿ってみます。
 小学校から帰ると、突然庭に大量の梅が干してあるんです。赤シソもあったような……と、ここで気付いたんですが、私の記憶ではこの「梅の塩漬けと赤シソを天日干しする」という、梅干しづくりの最終工程の記憶しかなく、それより前の工程を見た記憶がさっぱりないんです。謎です。
 次の記憶は台所。テーブルの上にある茶色の小さな壺。開けると中には梅干しと赤シソが!もう完成してるんです。
 そして次の記憶は、食べるところです。私はまず「梅干しだけ」を食べます。つまようじで、茶色の壺から一つ取り出して、少し覚悟を決めて気合を入れて、パクっと口の中へ。
 瞬間、全身が身震いしますね。酸っぱさとしょっぱさのダブルパンチであります!私の表情はもちろん、しわしわの「梅干し顔」に(笑)頭の先から汗ばむ酸っぱさで、一粒食べると一気に目が覚める思いでしたね~。
 それから「東北人の漬物あるある」なんでしょうか、しょっぺーしょっぺーコレが!でもその分、おにぎりにするといいんですよね。多めのごはんで固めににぎって、焼き海苔で全体をくるんで、かぶりつく。イイ感じに塩っ気がなだめられて、おしとやかになるんです(笑)この梅干しおにぎりは、運動会とか遠足とか、小学校のイベントのお弁当には必ず登場してました。大好きでした。
 このおばあちゃんの梅干しに慣れているからか、市販のものではなんとなく物足りないんです。酸っぱさもしょっぱさもマイルドで、そりゃ、その方が体にはいいんだろうけど……でもなぁ~、あのパンチが効いてる梅干しがやっぱり好きなんだよな~。
 
 おばあちゃんも晩年は、梅干しづくりをしなくなりました。なのであの味の記憶もだいぶん前のものとなってしまいましたね。懐かしいな……
 もうあの梅干しを食べることはできませんが、思い出すと相変わらず「梅干し顔」を作ってしまう私でした。

 おばあちゃん、ごちそうさまでした。
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