第25話 女の勘
文字数 543文字
疑問を胸に抱きながら、鏡に向かって藤音は紅を唇にのせた。
これで仕度は出来上がりである。華やかな衣装をまとってすらりと立つ姿は、牡丹の花のようだ。
「お綺麗でございますよ、藤音さま」
腰に両手を当てて如月は満足げにうなずいた。
「これならどこへ出られても引けを取りませんわ」
しかし、仕度の出来栄えとは裏腹に如月の表情は曇りがちだった。女の勘というやつか、どうも今夜は悪い予感がする。
藤音さま、と如月は意を決して自分の主を見つめた。
「この如月もついていってよろしゅうございますか」
もちろんよ、と藤音は快諾した。
「来客は初めてお会いする方。如月が一緒に来てくれれば心強いわ」
「ならば不肖ながらこの如月、お供させていただきます」
戦場に赴く兵士のごとき面持ちで、如月は藤音の後に控えて歩き出した。
城の廊下をしずしずと進み、曲がり角まで来ると先はもう大広間だ。
ここからでも若者たちの笑い声が聞こえてくる。客人と供の者たちだろうか、ずいぶんと賑やかだ。
広間の入り口まで来て何気なく中に視線を向けた藤音は、一瞬、眼を見開いた。
「藤音さま?」
後ろで如月が怪訝そうな声を出す。
「いかがなさいました?」
信じ難い光景に藤音の足は止まったままだ。背後からひょいと中をのぞいた如月もまた息を呑む。
これで仕度は出来上がりである。華やかな衣装をまとってすらりと立つ姿は、牡丹の花のようだ。
「お綺麗でございますよ、藤音さま」
腰に両手を当てて如月は満足げにうなずいた。
「これならどこへ出られても引けを取りませんわ」
しかし、仕度の出来栄えとは裏腹に如月の表情は曇りがちだった。女の勘というやつか、どうも今夜は悪い予感がする。
藤音さま、と如月は意を決して自分の主を見つめた。
「この如月もついていってよろしゅうございますか」
もちろんよ、と藤音は快諾した。
「来客は初めてお会いする方。如月が一緒に来てくれれば心強いわ」
「ならば不肖ながらこの如月、お供させていただきます」
戦場に赴く兵士のごとき面持ちで、如月は藤音の後に控えて歩き出した。
城の廊下をしずしずと進み、曲がり角まで来ると先はもう大広間だ。
ここからでも若者たちの笑い声が聞こえてくる。客人と供の者たちだろうか、ずいぶんと賑やかだ。
広間の入り口まで来て何気なく中に視線を向けた藤音は、一瞬、眼を見開いた。
「藤音さま?」
後ろで如月が怪訝そうな声を出す。
「いかがなさいました?」
信じ難い光景に藤音の足は止まったままだ。背後からひょいと中をのぞいた如月もまた息を呑む。