第335話 ミルキー城に潜入したというか

文字数 1,233文字



 はい! かーくんですっ。
 僕視点、戻ってきました!
 僕が主役だからね。
 勇者じゃなくても、ぽよぽよ系でも、兄ちゃんみたいにイケメンじゃなくても、主役は僕!

 はぁ……。
 その主役、地下牢に入れられちゃったよ。
 これで何度め?
 廃墟の地下牢に続き二回めか。
 二度あることは三度あるって言うよね? まさか、まだもう一回、牢屋にぶっこまれるのかな? しょぼん……。

 お縄で縛られたまま、お城に入ったはいいけど、そのまま地下牢に直行だ。
 これは潜入とは言わない気がする。
 なにしろ、まだ縛られてるし、牢屋の鉄格子にはカギかかってるしな。

「おまえたちは明日の朝、中庭で火焙りの刑だ。それまでおとなしくしてろよ」と、言いすてて、さっき牢屋のなかにポイッとされた。

 幸い、口はふさがれてない。

「僕たち火焙りだって。どうする?」
「逃げだすしかないだない?」
「どうやって? 縛られてるし、カギもかかってるよ」
「カギはともかく、縄は切ればいいがね」

 アンドーくんはいつのまにとりだしたんだ? 手に短剣を持ってる。
 そういえば、今回は武器や手荷物はとりあげられなかった。

「えーと、それ、ポイズンダガー……」
「大丈夫だけん。こっち寄るだわ」

 大丈夫って言われてもなぁ。
 うしろ手に縛られたままだしなぁ。見ずに切るってことだよね?

「手元が狂っちゃったぁ、とかなしだよ?」
「かーくんも心配性だねぇ」

 あははと笑われたけど、心配にもなるよ。薄暗いなかで、うしろ向きのまま、毒の刃でロープ切ろうっていうんだから。
 とは言え、ほかに方法がない。

「……じゃあ、お願い」

 僕は覚悟を決めて、両腕をさしだした。
 アンドーくんはナイフ使いの達人だねぇ。
 パラリと切れて、手が自由になる。

「あっ、ちゃんと切れた」
「あはは……信用しちょらんだった?」
「そ、そんなことないよ?」

 お返しにアンドーくんのロープを切って、イケノくんも解放して、これで全員、拘束脱却!
 ……けど、問題はここからなんだ。
 牢屋のカギ、どうしよう?
 以前はアンドーくんが牢の外にいたから、カギをとってきてもらったんだけど、今回はいっしょになかにいる。

 うーん。密室。
 いや、牢の出入り口は鉄格子だ。
 五センチ間隔のスキマはある。
 けど、それは人間が出ていける幅じゃない。

 ん? 人間は出ていけないよね。人間ならね。
 でも、クピピコなら出入りできる……。

「あっ、ダメだ。コビットたちはロランといっしょにいるんだった」

 思わず頭をかかえる。
 よこから、アンドーくんがつぶやいた。

「コビットなら、預かりボックスに入れぇだない?」

 ん? 預かりボックス……?
 ハッ! そうだった。
 手紙のやりとりをするためのボックスだと認識してたけど、よく考えたら、コビットたちのサイズなら、ボックスのなかにも入れるんじゃ?

「そうだね! ロランに頼んでみよう」

 クピピコならコビット王の剣を持ってるしね。全員でコビット族(サイズ)になって、今すぐ牢屋から脱出だー!
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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