第91話 みんなの職業

文字数 1,254文字



 マリーさんが元気になったので、安心したスズランさんが神殿の祈りの間に立った。
 や、やっとだ。やっと職につける。
 これでもっとバラエティに富んだ攻撃ができるようになる。なんと言っても、僕らには攻撃魔法を使える人が少ない。早めにカバーしないと。

「僕はまだ職をきわめてないので、勇者のままでいいです」

 うん。まあ、蘭さんはそれがいいね。
 勇者にしか使えない技もあるし、それがボス戦ですごく大事だったりするんだ。
 今の段階で勇者の職につけるのは、たぶん、世界中でも蘭さん、ただ一人だ。早くきわめてもらおう。

「シャケは?」
「あっ、おれ、商人きわめたで。フェニックス戦で職業ポイントたまったんや」
「職業ポイント?」
「戦闘勝利したときに貰える職業経験値やな。強い敵はポイントもデカイ」
「なるほど。単純に戦闘回数じゃないんだ」
「次はなんにしょうかなぁ」
「シャケは戦士むきだよ。最初のうちはむいてる職のほうがいいんじゃない?」
「せやなぁ。戦士はMPいらずで使える特技もおぼえるし、装備品が商人のときのまんま使いまわせるしなぁ」
「じゃあ、いいじゃん。戦士で決まりだよ」

 ほんとは誰かに魔法使いになってもらいたいんだけど、残念ながら三村くんの数値は、どう見ても魔術師むきじゃない。ムリして魔法覚えてもらっても、MPが少ないから実戦ですぐにMP切れしてしまう。

「あの、じゃあ、おれが魔法使いになぁましょうか?」

 僕の顔色を読んだのか、安藤くんが言いだした。

「えっ? いいの?」
「おれ、もうアサシンきわめちょうし、転職したいと思っちょうました」
「アサシンなんて、基本職にないよね?」
「さあ。おれは最初、ブラン王の騎士だったけど、身軽さを買われて特別訓練、受けたがね」

 僕と安藤くんの会話を小耳にはさんで、スズランが話しかけてきた。ラッキー。

「おそらく、本来は何かの上級職なんだと思います。アンドーさんは特別な訓練のおかげで、基本職をきわめずに上級職につけたのではないでしょうか」

 ふうん。そうか。途中で仲間になった強い味方キャラって、基本職とばしてることがあるよね。あんなもんか。

「ちょっと、アンドーくんのステータス見せてね」

 アンドーくんはレベル20だ。
 蘭さんがレベル21だから、まあまあいい感じで僕らのレベルも上がってきてるってことか。シャケは僕より一足早くレベル20。僕は19だ。

 ちなみに、アンドーくんの数値。
 HP220、MP68、力110(121)、体力90、知力75、素早さ88(106)、器用さ70(77)、幸運35。
 かっこ内の数値はどうやら、その職業についているときの職業ボーナスのようだ。つまり、力と器用さにプラス10%、素早さがプラス20%加算されている。

 基本の数値を見ると、力もけっこう強いし体力も高いけど、かと言って知力も低くない。幸運が低いだけで万能型と言える。

 マジック
 巻きで行こう〜(>__
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み