第238話 いざ、合成

文字数 1,596文字


 僕は思いきり疑念をこめた目でおばあさんをながめていたようだ。
 おばあさんの目がカアーッとひらく。
 目玉とびでそう!

「高くはございません! 合成には長年の経験則が必要なんでございますですよ。なれないうちは失敗いたしますからな。失敗したら、貴重な素材が消えてしまうこともございますですよ! このババめがやれば、百パーセント、必ず成功するのでございます」
「な、なるほど。技術料なんですね。じゃあ、頼みます」

 押しきられた気がしなくもないけど、僕は二万円を払った。そういえば、ここはダブルAでも二割引ききかないんだな。技術料だからか。

 おばあさんは精霊のアミュレットと、蘭さんの外した天使の羽飾りを台座に載せた。
 ちなみに精霊のアミュレットはブレスレットだ。護符みたいなものがぶらさがっている。シルバーの細いくさりで装飾品としてもキレイ。

「さて、ここに魔法の潤滑油となる銀晶石をプラスしますでございます。魔法媒体なるものでございますな。この銀晶石が高価なんでございますよ。貴重のゆえに不足しがちなもので、ギルドの仕事依頼にて、採取をたのんでおりますでございます。おヒマなときにでも、お受けくださりませんかな」

「ばあちゃん。話それてるよぉ〜」と、ギャル孫。
 まだ、そこにいたんだ。

「カアッ! それたのではないわい。わざとじゃ。大事なことだから、説明のなかに織りこんでおいたのじゃー!」
「わぁーった。わぁーった。たりぃよ、もう」

 どうでもいいから、早く合成してほしいな……。

「では、合成いたしますでございます」

 やっとやってくれるのか。
 おばあさんが台座を手動でグルグルまわすと台座に載せたものたちが、じょじょに光ってくる。最初はほんのり。そのうち目をあけていられないほどになって、虹色に輝いた。

「成功でございますですじゃ!」

 おおっ! これか。これが合成魔法か——って、なんにも変わってないように見えるんだけど?
 台座の上には精霊のアミュレットがちょこんと載っている。
 天使の羽飾りと銀晶石は消えてしまった。

「あの……同じに見えるんですが?」
「カアーッ! ちゃんと見なされでございます。ここ、ここ。ここに羽飾りが増えておりますでございましょう」
「あっ、ほんとだ」

 シルバーの護符のとなりに、小さな羽飾りがチャームになって新たについた。
 性能をたしかめると、たしかに即死魔法、全状態異常を無効と表記も変わってる。というか、アイテムの名前そのものが、天使のアミュレットになってる。ステ上げや自動回復魔法もちゃんと残ってる。

「わあっ。おばあさん、スゴイ。スゴイ!」
「おばあさんではございませんです。大合成魔女さんとお呼びくだされでございます」

 あはは。いろいろ、めんどくさい。

 そのあと、僕はたくさん、合成した。とりあえず、バランのや、さっき装飾品屋で買った天使の羽飾りも精霊のアミュレットと合体させた。
 僕はアミュレットと、ばあちゃんのお守りを合成した。どっちもお守りだからかな?

「おっ! おおー! これは、大成功の予感がしますでございますですじゃ! まれに大成功することがあるのでございますですよ」
「えっ? ほんとですか?」
「ほれ! 見るでございますですじゃー! これぞ、ばあちゃんのアミュレット!」

 僕のだけ、みんなのと名前が違う……。
 ちょっと人前で言うのが恥ずかしい名前だ。

 でも、おかげで、なんか、ばあちゃんの加護っていう特殊効果が入ったぞ。
 ばあちゃんのお守りの効果は毒、マヒ、魅了無効だけだったのに、ばあちゃんの加護で、全状態異常無効がついた。

 それだけじゃない。クリティカル発生率50%アップって書いてある。
 僕、今でさえ幸運数値の高さのせいで、二回に一回はクリティカルなんだけど?
 それって、ほぼクリティカル発生ってことなんじゃ?

 僕、どんどんチートになってくな。
 ふひひ。えへへ……。
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登場人物紹介

東堂薫(僕)

ニックネームは、かーくん。

アパレルショップで働くゆるキャラ的人間。

「なかの人、しまねっこだよね?」とリアルで言われたことがある。

東堂猛(兄)

顔よし、頭よし、武芸も達人。

でも、今回の話では何やら妙な動きをしている。

九重蘭(ここのえらん)

同居している友人……なのだが、こっちの世界では女の子?

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