第13話:旅行、企業年金破綻、尖閣問題

文字数 2,025文字

 それにも関わらず運用で利益を上げた場合に得られる成功報酬を顧客の年金基金から受け取っていたことが証券取引等委員会の調査で判明した。実際は、同社では運用当初から損失が出てリーマンショック以降は、約1千億円の損失を出していた。しかし、毎年7%以上の運用益が出ていると年金基金運用担当者に虚偽の報告をしていた。

 この事件の流れを見ると顧客と企業年金資産の投資一任契約を結び、その後、配下の「ITM証券」を通じ英領ケイマン諸島の特定ファンドに資金を移した。そして、同社はケイマンに入った資金を英領バミューダの信託銀行を通じて運用する形を取った。しかし、実質的には、香港の大手銀行に移していた事が、その後、判明した。

 海外での資金運用に詳しい証券関係者は、タックスヘイブン『税制上優遇措置が与えられている国や地域』の1つであるケイマン諸島には多くのペーパーカンパニーがある。そのため、そこでの運用実態は、実に分かりにくい。その上、海外の複数の金融機関を介して資金を運用すれば金融当局の監視は困難だという。この点から金融庁の目をすり抜けることを目的として複雑化したようだ。

 この事件を契機に金融庁は、投資会社に監査法人などによるチェックを義務付け監視を強化した。また、金融庁は投資会社のみならず、上場していない証券会社にも外部監査を義務付けることを検討した。投資運用会社などが虚偽の運用実績などを報告した場合には罰則を強める実際に私募ファンド、オルタナティブなどの金融商品を取り扱って欲しいと言う依頼は多い。

 しかし、クライアントに迷惑をかける可能性があるので取り扱わない。AIJ投資顧問の年金資産消失事件で、私たちが学んだ事は、リーマンショック後の金融危機、最近の欧州不安、急激な円高、株安、東日本大震災、原発問題などのあらゆるリスクに対応でき運用利益が上がる手法などないという事であった。その後、日本と中国、韓国との間である島の領有権をめぐる対立が激化し両国関係が悪化。

 韓国とは、2012年8月10日の李明博大統領による竹島上陸が発端となり李大統領の「天皇謝罪要求」発言も続いて関係が冷え込んだ。日本は、竹島問題を国際司法裁判所に単独提訴する準備を進めた。日韓が領有権を主張している竹島、韓国でいう独島「ドクト」は、韓国にとってみると単なる領土問題ではなく歴史認識が濃密に絡んだ非常に敏感な問題だった。

 領有権をめぐる日韓どちらの主張が理にかなっているかは、ともかく朝鮮半島などの権益争いが背景にあった日露戦争に勝利した日本が1905年に竹島「独島」の領有を閣議決定した。これが日本による植民地支配の大きな一歩になったと韓国側ではとらえられている。だから、単なる領土問題ではなく歴史問題と直結した問題としてとらえられてしまう。

 その後、日本政府は、沖縄県石垣市の尖閣諸島のうち民間所有の魚釣島、北小島、南小島の3島を20億5千万円で購入することを閣議決定した。他の島は、既に国有地か米軍の射爆場としての賃借地だった。中国も領有権を主張する尖閣諸島の国有化を境に日中関係は極度に冷え込んだ。

 野田佳彦首相の国有化決断の背景には、東京都の石原慎太郎知事が4月に3島を東京都が買い取る考えを示したことがあった。このため、野田佳彦首相が対中強硬派で尖閣諸島への自衛隊配置や構造物建設などを唱えていた石原氏のもとで都が所有するより日中関係の摩擦を抑えやすいと考えたと言う訳だ。

 しかし、この構想は、中国に説明する前に報じられ中国が抗議する中での閣議決定となった。そのため、中国の反発は一層大きくなった。中国公船が尖閣諸島周辺に大挙して現れ日本の領海に侵入する事案が繰り返され様になった。尖閣諸島を巡る対立を新たに国家主席に就いた習近平「シー・ジンピン」氏が政権基盤強化に利用しているとの見方もあった。

 中国との間では、9月11日に日本政府が尖閣諸島の国有化に踏み切ったことから中国側の反発が拡大した。中国は公船を繰り返し尖閣周辺の日本領海や接続水域に送り込み中国本土での反日デモを容認し日本製品のボイコット支持など強硬な対抗措置を取った。そのため、一部のデモ参加者は、暴徒化し中国国内にある日系のスーパー破壊や工場放火を繰り返した。

 こうして、日中関係は極度に悪化し、その暴徒を中国の警察が見て見ぬふりをしているのだった。その様子は、ニュースとして、日本のテレビで、放映された。2012年は、このような領土問題が顕在化した年となった。日本経済は春以降、欧州債務危機の影響拡大による海外経済の減速を主因に低迷が続いた。

 実質GDP「国内総生産」成長率は4~6月期にマイナスに転じ7~9月期のマイナス幅は前期比年率換算で3.5%に拡大した。内閣府は10月、景気の基調判断で悪化とした。緩やでも拡大局面が続いていた景気は、3月頃に「山」を越え後退局面に入ったと言われた。
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