第9話:不景気、大雪、欧州金融危機

文字数 2,011文字

 参院で過半数にない民主党は政権基盤の安定化のため、社民、国民新両党に政権協議を申し入れ、連立政権樹立で合意。民主党の鳩山由紀夫代表は9月16日の衆参両院本会議で、第93代、60人目の首相に選出され3党連立の鳩山内閣が発足した。

 2008年秋に起きた世界規模の金融危機の直撃を受けた。その結果、同年10~12月期と09年1~3月期の実質GDP「国内総生産」は、前期に比べ年率換算でそれぞれ10%を越える大幅減となった。これで企業収益が悪化、雇用不安や賃金低下で個人消費もと落ちた。輸出の回復や政府の景気対策の効果で今年4~6月期は年率2.7%増に持ち直しプラスとなった。

 しかし、内需主導の本格回復には遠い状況だ。20世紀の米産業界をリードしてきたビッグスリーのクライスラーが4月30日、GMが6月1日、それぞれ連邦破産法11条に基づく会社更生手続きの適用を申請、経営破綻した。環境対応車など新時代への取り組みの遅れや金融危機とその後の景気後退に見舞われたことが原因だった。

 米国経済の地位低下を象徴する出来事となった。クライスラーは、イタリアの自動車大手フィアットと包括提携し、6月10日、新クライスラーグループが誕生した。米製造業では、資産規模で最大倒産劇のGM「ゼネラルモータース」も7月10日に米政府が過半数株を握る「新生GM」として再出発した。

 2009年1月に就任したオバマ米大統領は4月5日、チェコ・プラハで行った演説で、「核兵器を使用した事がある唯一の核保有国として米国には道義的責任がある」と述べた。そして「核兵器のない世界」を追求する決意を示した。これを受けノルウェー・ノーベル賞委員会は10月9日、世界の人々に「より良き将来への希望を与えた」としてノーベル平和賞授与を決めた。

 現職の米大統領が同賞を受賞するのは、90年ぶり3人目。オバマ氏は12月10日の授与式で、早すぎる受賞への批判を踏まえ「歴史上の偉人と比べ、私の業績はささやかなものだ」と認め、「戦時」大統領として不安定な国際情勢に現実的視点から対処していく考えを表明し、2009年が終わり、2010年となった。

 この年は、過去に例のない異常気象の1年。1月前半、2月上旬には日本海側の各地で大雪となった。1月中旬、新潟県の山沿いで3メートルを超える大雪。2月上旬には新潟で、26年ぶりに81センチの積雪となるなど東日本日本海側を中心に2006年冬以来の大雪となった。そして、日本航空が2010年1月19日、会社更生法の適用を東京地裁に申請、経営破綻。

 負債額は約2兆3千億円と事業会社では過去最大だった。京セラ創業者の稲盛和夫氏を会長に迎え彼の経営者としての手腕に期待し政府が出資する企業再生支援機構の下で再建を目指した。事業規模を3分の2に圧縮するとし内外45路線からの撤退やグループで約1万6千人の人員削減など抜本改革に着手した。パイロットや客室乗務員の退職数は目標に届かず最大2百人を整理解雇した。

 更生計画は債権放棄に応じた銀行団などの合意を得て11月末に確定した。支援機構は公的資金3500億円を出資した。11年3月末に更生手続きを終結し、12年中の再上場を目指す。日本の春は、暖かい空気が流れ込み気温が高い時期と寒気が南下し気温が低い時期があった。そして全国的に気温の変動が大きかった。

 強い寒気が流れ込んだ4月17日に関東甲信地方から東北地方南部にかけての広い範囲で降雪の異常な気候。東京などでは1969年に観測した最も遅い降雪の記録に並んだ。また、本州付近を低気圧や前線が頻繁に通過し、春の降水量は、北日本から西日本にかけてかなり多く日照時間は、北日本と東・西日本日本海側でかなり少なかった。

 欧州16カ国で構成されるユーロ圏では、財政赤字急拡大に見舞われた国々が、多かった。ギリシャが5月、アイルランドも11月に欧州連合「EU」や国際通貨基金「IMF」などの緊急融資を依頼した。その後も信用不安は払拭されず、ポルトガルなど南欧諸国への波及が懸念されている。金融危機をきっかけに財政が悪化した一部ユーロ圏諸国では国債利回りが急上昇した。

 その中でも、財政赤字統計の大幅修正を繰り返したギリシャと、銀行危機に陥ったアイルランドが市場の信頼を失い支援要請に追い込まれた。危機への対応をめぐり各国の足並みの乱れも明らかになり、欧州単一通貨ユーロは円や米ドルなど主要通貨に対して急落した。しかし、7月の参院選では首相の消費増税発言などが響いた。

 その結果、民主党は改選54議席を下回る44議席と大敗した。与党は非改選を足しても国会議員数が、過半数を割り衆議員参議員で、多数派が異なる「ねじれ国会」になった。首相は9月の代表選で小沢氏を破り内閣を改造したが、尖閣沖事件での不手際で支持率は急落した。そのため、政権運営は厳しさを増した。
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