剣術の授業(教官の洗礼)
文字数 2,991文字
ボブ先生の号令の下 にランニングが課された。
「全員、準備はいいか?それではスタート!」
「1位は貰ったぁぁ」
「そうはさせない」
開始の合図と同時に我先とスパートを切ったのは、格闘家の男性ケヴィン。負けじと食らいついていくのは、双剣使いの女性ニコルだ。この2人は双方ともにライバル意識が強く、競技の度に競い合っている。一同もそれに続いていく。
7周を周る頃にはニコルを先頭に、ケヴィンと続き、他数人が先頭集団を形成し、やや遅れて大多数の中団、遅れて少数の後方集団と続く。俺は後方集団に位置していた。
(今のまま ではやはり遅いか)
ラスト1周となりケヴィンが再びニコルを抜き返し、後続を引き離す。ゴール手前、ニコルがケヴィンに追いつくかと思われたが、後僅かの距離でケヴィン優勢のままゴール。俺は必死に走ったが、努力敵わず後ろの順位でフィニッシュした。
◇
「ふぅ・・サッパリした」
「ハァハァ・・・後、ほんの少しだったのに相変わらずケヴィンは速いね」
ケヴィンとニコルは互いの肘と肘とをぶつけて互いに讃えあう。ライバル意識が強い2人であったが、互いの実力は認め合っている仲であった。
「いい勝負だった」
「2人とも凄い」
激闘を繰り広げた2人の周りには人だかりが出来ている。人々は口々に感想を言い合っていた。俺も遠くから2人の様子を眺めていた。
(やるな。2人共)
2人は以前、任務を通じて知り合った俺の友人であった。2人が好成績を修めたことは俺にとっても嬉しかった。
「準備運動は終わったか。ケヴィン、ニコルの2人共よくやった。他の者もご苦労」
ボブ先生は手を叩きながら2人の健闘を讃える。一方、ちらっと 俺の方を見たような気がした。
「ありがとうございます。」
「恐縮です。」
「では、剣術の鍛錬を始める。各々自身の武器を手に取り、手持ちの宝玉をペンダントに埋め込め。」
ケヴィンはペンダントに宝玉を埋め込む←拳(弐)
ニコルはペンダントに宝玉を埋め込む←双剣(弐)
・
・
俺はペンダントに宝玉を埋め込む←剣(弐)
俺は練習用の標準ロングソードを手元に握りしめた。
「準備できました。」
「よし、1列に並んでひとりずつ、教官である俺に攻撃してこい」
ボブ先生はそう言って自身の装備に練習用の標準ロングソードを選んで構える。
「俺に一撃を入れられたら、この後の授業は免除するぞ」
これはボブ先生恒例の授業の盛り上げ方と開始方法であった。練習ではスキルの発動こそ禁止されているが、貴重な教官との戦闘経験を生徒とスキルの宝玉に吸収させるのが狙いだった。
「オッシャー」
「待ってました」
「今日こそは」
◆
「一番手は誰だ。」
「このケヴィンが相手になる。」
ケヴィンのペンダントには拳(弐)の宝玉がつけられている。装備は練習用の標準ナックル。ケヴィンの身体は鋼鉄のように固くなり、その拳 はひとたび当たれば岩を砕く程である。
「いくぞ」
「来い」
ケヴィンはそう言って、ボブ先生目掛けて怒涛のパンチの連打を繰り出す。それを右、左に回避して見せるボブ先生。だが、ケヴィンは諦めない。ケヴィンはボブ先生の上半身を積極的に狙いにいった。それをさもありなんと躱 すボブ先生。ボブ先生に上半身を意識させるのが狙いであった。
「そこだ」
ボブ先生の回避行動を予測し、ここぞという所に左回し蹴りでボブ先生の左胴 目掛けて蹴りにいった。
ガガガガガガガガガガガガガ
ボブ先生の標準ロングソードとケヴィンの脚がぶつかり合う。
ケヴィンは剣こそ装備していないが、その攻撃力は剣と変わらない。教官のボブ先生と言えど、まともに当たっては只 では済まない。ボブ先生は持っている標準ロングソードを自身の右斜め上から左下方向にスライドさせて大地に突き刺し、標準ロングソードの刀身をケヴィンの脚に当てることで巧みに左胴への攻撃を防いだ。
「甘い」
左回し蹴りを剣で防がれたことで生じた隙をボブ先生は見逃さなかった。大地に刺した標準ロングソードを持ち上げ、そのままケヴィンの胴体目掛けて一閃。
「ぐはっ」
ケヴィンは痛恨のダメージを負い倒れ伏す。
◆
「次だ次。2番手は誰だ?」
「双剣使いニコルいきます。」
「女だからって容赦はせんぞ」
「望むところです」
双剣使いのニコルは両利きである。右手に練習用の標準ロングソードを、左手に練習用の標準ショートソードを装備している。胸のペンダントには、双剣(弐)の宝玉が輝いていた。ニコルが得意とするのはその速さと打撃の多さを活かし、相手に裂傷を負わせることである。練習試合では禁止されているものの、本来なら相手が一度 かすり傷を負えば致命傷に至る。ニコルのスキルの宝玉ー毒(弐)によるものである。実戦ではこういった使い方もできる。だが、これはあくまで教官との練習試合である。
「ヤァ!!」
威勢のいい掛け声と共にニコルがボブ教官に向かって走り出す。
「喰らえ!」
ニコルは両利きゆえに巧みな攻撃ができる。どちらかというと右利きではあったが、あえて左のショートソードをボブ先生に向かって、左から右へ横に一閃する。ボブ先生は右利きゆえ、ニコルからの右方向からの攻撃を利き腕の右手を使って防がないといけない。ボブ先生は持つ剣を右手に力を入れて右側に傾けて右からくる攻撃に備えた。
「ちっ。これだから、両利きは困る」
ガキーーーーーーーーーーン
ニコルの持つショートソードとボブ先生のもつロングソードがぶつかり合う。ボブ先生は利き腕を防御に使う形になるので、剣を構える姿勢を崩された格好になる。
「勝機!!」
ニコルはここぞとばかりに、本来得意とする右手側のロングソードを今度はボブ先生から見て左から右に横に一閃する。
ブーーーーーーーーーーーーン
ニコルの攻撃は空振りに終わる。ボブ先生は剣で防ぐのが無理だと分かると
上半身を後ろに反 らすことで回避する。
「せい!」
ボブ先生からの一振り。
「ぐふっ」
ニコルは痛恨のダメージを負い倒れ伏す。
■
「次は誰だ。」
・
・
・
・
・
・
(略)
ボブ先生の洗礼を受けて、クラスメイトが次から次へと倒れ伏していく。
そして、俺の番が回ってきた。
「次、アレスの番だ。」
「アレス、いきます」
俺は両手に標準ロングソードを持ち、ペンダントに剣(弐)を埋め込んでいる。
俺は万能型を自称している。ゆえに得意な戦法はない。俺はじりじりとボブ先生との間合いをゆっくり詰めていく。ボブ先生との間合いが双方ともに剣の届く範囲になる。
「今だ」
俺は剣の届く範囲になると、今回は相手を斬る のではなく、剣で突く ことにした。俺は剣を前に倒して腕を大きく伸ばした。
キーーーーーーーーーーーーン
俺の剣とボブ先生の剣とが衝突し甲高い音が鳴る。ボブ先生は俺が剣を持って突く 方法に対して、とっさに剣先を下に向け、刀身と刀身が90度の方向で交わるタイミングで刀身同士をぶつけて横に弾いた 。
「しまった」
俺の突きはボブ先生に届かず、持っている剣の刀身を横に弾かれてしまった。俺は姿勢を大きく崩す格好になる。
「どりゃぁぁ!!」
ボブ先生の渾身の一振り。
「うっ」
俺は痛恨のダメージを負い、他のクラスメイトと同じようにして倒れ伏した。
・
・
・
「お前ら、修業が全然足りん。」
「全員、授業参加決定だ!!」
全員返り討ちにあう。これも毎度の恒例の行事であった。
「全員、準備はいいか?それではスタート!」
「1位は貰ったぁぁ」
「そうはさせない」
開始の合図と同時に我先とスパートを切ったのは、格闘家の男性ケヴィン。負けじと食らいついていくのは、双剣使いの女性ニコルだ。この2人は双方ともにライバル意識が強く、競技の度に競い合っている。一同もそれに続いていく。
7周を周る頃にはニコルを先頭に、ケヴィンと続き、他数人が先頭集団を形成し、やや遅れて大多数の中団、遅れて少数の後方集団と続く。俺は後方集団に位置していた。
(
ラスト1周となりケヴィンが再びニコルを抜き返し、後続を引き離す。ゴール手前、ニコルがケヴィンに追いつくかと思われたが、後僅かの距離でケヴィン優勢のままゴール。俺は必死に走ったが、努力敵わず後ろの順位でフィニッシュした。
◇
「ふぅ・・サッパリした」
「ハァハァ・・・後、ほんの少しだったのに相変わらずケヴィンは速いね」
ケヴィンとニコルは互いの肘と肘とをぶつけて互いに讃えあう。ライバル意識が強い2人であったが、互いの実力は認め合っている仲であった。
「いい勝負だった」
「2人とも凄い」
激闘を繰り広げた2人の周りには人だかりが出来ている。人々は口々に感想を言い合っていた。俺も遠くから2人の様子を眺めていた。
(やるな。2人共)
2人は以前、任務を通じて知り合った俺の友人であった。2人が好成績を修めたことは俺にとっても嬉しかった。
「準備運動は終わったか。ケヴィン、ニコルの2人共よくやった。他の者もご苦労」
ボブ先生は手を叩きながら2人の健闘を讃える。一方、
「ありがとうございます。」
「恐縮です。」
「では、剣術の鍛錬を始める。各々自身の武器を手に取り、手持ちの宝玉をペンダントに埋め込め。」
ケヴィンはペンダントに宝玉を埋め込む←拳(弐)
ニコルはペンダントに宝玉を埋め込む←双剣(弐)
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俺はペンダントに宝玉を埋め込む←剣(弐)
俺は練習用の標準ロングソードを手元に握りしめた。
「準備できました。」
「よし、1列に並んでひとりずつ、教官である俺に攻撃してこい」
ボブ先生はそう言って自身の装備に練習用の標準ロングソードを選んで構える。
「俺に一撃を入れられたら、この後の授業は免除するぞ」
これはボブ先生恒例の授業の盛り上げ方と開始方法であった。練習ではスキルの発動こそ禁止されているが、貴重な教官との戦闘経験を生徒とスキルの宝玉に吸収させるのが狙いだった。
「オッシャー」
「待ってました」
「今日こそは」
◆
「一番手は誰だ。」
「このケヴィンが相手になる。」
ケヴィンのペンダントには拳(弐)の宝玉がつけられている。装備は練習用の標準ナックル。ケヴィンの身体は鋼鉄のように固くなり、その
「いくぞ」
「来い」
ケヴィンはそう言って、ボブ先生目掛けて怒涛のパンチの連打を繰り出す。それを右、左に回避して見せるボブ先生。だが、ケヴィンは諦めない。ケヴィンはボブ先生の上半身を積極的に狙いにいった。それをさもありなんと
「そこだ」
ボブ先生の回避行動を予測し、ここぞという所に左回し蹴りでボブ先生の左
ガガガガガガガガガガガガガ
ボブ先生の標準ロングソードとケヴィンの脚がぶつかり合う。
ケヴィンは剣こそ装備していないが、その攻撃力は剣と変わらない。教官のボブ先生と言えど、まともに当たっては
「甘い」
左回し蹴りを剣で防がれたことで生じた隙をボブ先生は見逃さなかった。大地に刺した標準ロングソードを持ち上げ、そのままケヴィンの胴体目掛けて一閃。
「ぐはっ」
ケヴィンは痛恨のダメージを負い倒れ伏す。
◆
「次だ次。2番手は誰だ?」
「双剣使いニコルいきます。」
「女だからって容赦はせんぞ」
「望むところです」
双剣使いのニコルは両利きである。右手に練習用の標準ロングソードを、左手に練習用の標準ショートソードを装備している。胸のペンダントには、双剣(弐)の宝玉が輝いていた。ニコルが得意とするのはその速さと打撃の多さを活かし、相手に裂傷を負わせることである。練習試合では禁止されているものの、本来なら相手が
「ヤァ!!」
威勢のいい掛け声と共にニコルがボブ教官に向かって走り出す。
「喰らえ!」
ニコルは両利きゆえに巧みな攻撃ができる。どちらかというと右利きではあったが、あえて左のショートソードをボブ先生に向かって、左から右へ横に一閃する。ボブ先生は右利きゆえ、ニコルからの右方向からの攻撃を利き腕の右手を使って防がないといけない。ボブ先生は持つ剣を右手に力を入れて右側に傾けて右からくる攻撃に備えた。
「ちっ。これだから、両利きは困る」
ガキーーーーーーーーーーン
ニコルの持つショートソードとボブ先生のもつロングソードがぶつかり合う。ボブ先生は利き腕を防御に使う形になるので、剣を構える姿勢を崩された格好になる。
「勝機!!」
ニコルはここぞとばかりに、本来得意とする右手側のロングソードを今度はボブ先生から見て左から右に横に一閃する。
ブーーーーーーーーーーーーン
ニコルの攻撃は空振りに終わる。ボブ先生は剣で防ぐのが無理だと分かると
上半身を後ろに
「せい!」
ボブ先生からの一振り。
「ぐふっ」
ニコルは痛恨のダメージを負い倒れ伏す。
■
「次は誰だ。」
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(略)
ボブ先生の洗礼を受けて、クラスメイトが次から次へと倒れ伏していく。
そして、俺の番が回ってきた。
「次、アレスの番だ。」
「アレス、いきます」
俺は両手に標準ロングソードを持ち、ペンダントに剣(弐)を埋め込んでいる。
俺は万能型を自称している。ゆえに得意な戦法はない。俺はじりじりとボブ先生との間合いをゆっくり詰めていく。ボブ先生との間合いが双方ともに剣の届く範囲になる。
「今だ」
俺は剣の届く範囲になると、今回は相手を
キーーーーーーーーーーーーン
俺の剣とボブ先生の剣とが衝突し甲高い音が鳴る。ボブ先生は俺が剣を持って
「しまった」
俺の突きはボブ先生に届かず、持っている剣の刀身を横に弾かれてしまった。俺は姿勢を大きく崩す格好になる。
「どりゃぁぁ!!」
ボブ先生の渾身の一振り。
「うっ」
俺は痛恨のダメージを負い、他のクラスメイトと同じようにして倒れ伏した。
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「お前ら、修業が全然足りん。」
「全員、授業参加決定だ!!」
全員返り討ちにあう。これも毎度の恒例の行事であった。