課外授業
文字数 2,278文字
次の日、俺はいつもより早めに寮を出て学校に向かった。寮の玄関先から学校の玄関先までの道の両脇には、辺り一面に綺麗な紫陽花(アジサイ)の花が咲いていた。青、紫、ピンク、白と色とりどりである。俺は早めに家を出たおかげでゆっくり花を観賞することができた。
(紫陽花の花が綺麗だ。もう5月か)
俺達は今年の春で高校2年生になった。昨年は色々なことがあったが今年はどんな1年になるのだろうか。空を見上げると、まるで今年一年の門出を祝福するかのように晴れ晴れと抜けるような青空が広がっていた。
「今日は諸君には折り入って話がある。」
朝一番、ミランダ先生が教壇の前で明快に告げた。
「お前たちもこの春で高校2年生だ。そろそろより実戦経験を積んで貰おうと思う。そこで、お前たちには毎年この時期に行われる恒例の課外授業を課そうと思う。」
ざわざわ・・・ ざわざわ・・・ざわ。
「勘違いするといけないので事前に伝えておくが、これはあくまで演習だ。実戦ではない。そこは安心して欲しい。いずれ来 るべき日に備えて自身を高めて欲しい。」
「課外授業の内容だが、ここエール学園から北に5kmの所には広大な無人の森であるウォルテア大森林が広がっている。ウォルテア大森林を抜けると、標高1000mのアルスター山が見える。アルスター山の頂に咲いている貴重な薬草・・・『アカシアハーブ』を採ってきて欲しい。白い綺麗な花を咲かすといわれている。」
「諸君にはウォルテア大森林の真ん中からスタートして貰う。道中には弱いモンスターも出るから気をつけろ。24時間以内に採って戻ってきて欲しい。いざとなったら失格になるが、事前に渡してある救難信号用の照明弾を使え。それで教師に位置を伝えろ。教師は近くに待機していると思うが駆けつけるまでの時間は自分たちで稼ぐんだ。危機管理能力も併せて養ってもらう。なお、間に合わなかった場合は自己責任になるので注意するように。」
「道中の人数制限は2人以上3人以下とする。この課外授業はパーティを組むことを主目的としている。人数が多すぎても難易度に大きく影響するため制限させて貰う。成績に大きく影響するから演習であっても本気で取り組むように。詳細は後に資料を配るのでそちらを参考にしろ。」
「この授業の後の時間はパーティを組むための自由時間とする。有効に使うように。」
ミランダ先生はそう言って俺達に資料を配って教室を去った。
他の人達は早速パーティを作るための行動に移った。仲のいい友人、知人に片っ端から声を掛けている。
俺のこのクラスでの評価はお世辞にも芳しいとはとても言えない。俺にとってパーティを作ることは、ある意味最大の難関だった。俺が頭を悩めて行動に移せないでいると、他の人はもう既にパーティが出来上がっているのか、あちらこちらで笑い声が聞こえてくる。また、人が大勢集まっている中心にはオズワルトの姿があった。
(オズワルトの人望は凄いな。それはそうと困ったな・・・)
俺が頭を悩ませていると、こちらの視線を感じたのか、オズワルトがこちらに来た。
「アレスまだパーティが出来ていないのか?」
「オズワルトか。残念だが、そうなんだ。」
「誰でもいいから1人か、2人選ぶだけだぞ?」
「それが出来ていたら、苦労はしないよ」
「じゃ俺と組むか?」
「いいのか?」
「ああ。本当はもう決まっていたが、俺がいなくても他の奴らも大丈夫だろ。」
「悪いな。だが、助かる。」
「よしてくれ、困ったときはお互い様だ。」
(オズワルトも優秀なやつだから学校から特別任務を課されているかもしれない。その関係で俺の経緯を知っているのかもしれないな)
こうして、俺はオズワルトと2人でパーティを組むことになった。
◇
◇
「あの~、私もパーティに入れて貰ってもいいですか?」
見た目は中背で容姿が整っている、可愛らしい女性だ。だが、耳が尖っている。エルフのようだ。
「何故、君のような可愛らしい女性がこのパーティに?」
可愛らしい容姿をした女性は他の人が取り合いをするんじゃないか?俺が訝 しんでいると、
「可愛いなんてありがとうございます。私はエルフでして、人間とは意思疎通がなかなか難しくて。それにアレスさんも、オズワルトさんも優秀で素敵な方ばかり是非パーティに入れて欲しいのです。」
「オズワルトは優秀だが、俺は優秀なんてとんでもない」
「いえいえ、私は存じあげております。」
(エルフは人間の感性や思考とは別と聞く、だがそれは本当なのか?)
「アレス、別にいいんじゃないか?向こうが入りたいと言っているんだ。」
(まぁ、それもそうだな)
「分かった。3人でパーティを組もう。」
「ありがとうございます。」
こうして、俺 、オズワルト、名をレオノーレというエルフの女子学生とパーティを組むことにした。
「そういや、自己紹介がまだだった。俺はアレス。職業は全般をこなせるが、今は前衛で装備は剣だ。」
「俺はオズワルトだ。後衛で職業は魔法使いだ」
「私はレオノーレです。前衛も後衛もいけます。職業は狩人で弓使いです」
「アレスが前衛、俺 が後衛、レオノーレが中衛を担当することにするか」
「決まりだな」
こうして、演習のパーティメンバーが決定するのだった。
(紫陽花の花が綺麗だ。もう5月か)
俺達は今年の春で高校2年生になった。昨年は色々なことがあったが今年はどんな1年になるのだろうか。空を見上げると、まるで今年一年の門出を祝福するかのように晴れ晴れと抜けるような青空が広がっていた。
「今日は諸君には折り入って話がある。」
朝一番、ミランダ先生が教壇の前で明快に告げた。
「お前たちもこの春で高校2年生だ。そろそろより実戦経験を積んで貰おうと思う。そこで、お前たちには毎年この時期に行われる恒例の課外授業を課そうと思う。」
ざわざわ・・・ ざわざわ・・・ざわ。
「勘違いするといけないので事前に伝えておくが、これはあくまで演習だ。実戦ではない。そこは安心して欲しい。いずれ
「課外授業の内容だが、ここエール学園から北に5kmの所には広大な無人の森であるウォルテア大森林が広がっている。ウォルテア大森林を抜けると、標高1000mのアルスター山が見える。アルスター山の頂に咲いている貴重な薬草・・・『アカシアハーブ』を採ってきて欲しい。白い綺麗な花を咲かすといわれている。」
「諸君にはウォルテア大森林の真ん中からスタートして貰う。道中には弱いモンスターも出るから気をつけろ。24時間以内に採って戻ってきて欲しい。いざとなったら失格になるが、事前に渡してある救難信号用の照明弾を使え。それで教師に位置を伝えろ。教師は近くに待機していると思うが駆けつけるまでの時間は自分たちで稼ぐんだ。危機管理能力も併せて養ってもらう。なお、間に合わなかった場合は自己責任になるので注意するように。」
「道中の人数制限は2人以上3人以下とする。この課外授業はパーティを組むことを主目的としている。人数が多すぎても難易度に大きく影響するため制限させて貰う。成績に大きく影響するから演習であっても本気で取り組むように。詳細は後に資料を配るのでそちらを参考にしろ。」
「この授業の後の時間はパーティを組むための自由時間とする。有効に使うように。」
ミランダ先生はそう言って俺達に資料を配って教室を去った。
他の人達は早速パーティを作るための行動に移った。仲のいい友人、知人に片っ端から声を掛けている。
俺のこのクラスでの評価はお世辞にも芳しいとはとても言えない。俺にとってパーティを作ることは、ある意味最大の難関だった。俺が頭を悩めて行動に移せないでいると、他の人はもう既にパーティが出来上がっているのか、あちらこちらで笑い声が聞こえてくる。また、人が大勢集まっている中心にはオズワルトの姿があった。
(オズワルトの人望は凄いな。それはそうと困ったな・・・)
俺が頭を悩ませていると、こちらの視線を感じたのか、オズワルトがこちらに来た。
「アレスまだパーティが出来ていないのか?」
「オズワルトか。残念だが、そうなんだ。」
「誰でもいいから1人か、2人選ぶだけだぞ?」
「それが出来ていたら、苦労はしないよ」
「じゃ俺と組むか?」
「いいのか?」
「ああ。本当はもう決まっていたが、俺がいなくても他の奴らも大丈夫だろ。」
「悪いな。だが、助かる。」
「よしてくれ、困ったときはお互い様だ。」
(オズワルトも優秀なやつだから学校から特別任務を課されているかもしれない。その関係で俺の経緯を知っているのかもしれないな)
こうして、俺はオズワルトと2人でパーティを組むことになった。
◇
◇
「あの~、私もパーティに入れて貰ってもいいですか?」
見た目は中背で容姿が整っている、可愛らしい女性だ。だが、耳が尖っている。エルフのようだ。
「何故、君のような可愛らしい女性がこのパーティに?」
可愛らしい容姿をした女性は他の人が取り合いをするんじゃないか?俺が
「可愛いなんてありがとうございます。私はエルフでして、人間とは意思疎通がなかなか難しくて。それにアレスさんも、オズワルトさんも優秀で素敵な方ばかり是非パーティに入れて欲しいのです。」
「オズワルトは優秀だが、俺は優秀なんてとんでもない」
「いえいえ、私は存じあげております。」
(エルフは人間の感性や思考とは別と聞く、だがそれは本当なのか?)
「アレス、別にいいんじゃないか?向こうが入りたいと言っているんだ。」
(まぁ、それもそうだな)
「分かった。3人でパーティを組もう。」
「ありがとうございます。」
こうして、
「そういや、自己紹介がまだだった。俺はアレス。職業は全般をこなせるが、今は前衛で装備は剣だ。」
「俺はオズワルトだ。後衛で職業は魔法使いだ」
「私はレオノーレです。前衛も後衛もいけます。職業は狩人で弓使いです」
「アレスが前衛、
「決まりだな」
こうして、演習のパーティメンバーが決定するのだった。