人の一生と人の意志

文字数 1,876文字

俺は2人を連れてとある場所に向かった。その場所とは学園の敷地内にある、池だった。



「こんな場所に来て何の用だ?」・・・オズワルト

「ここでしか話せないと思ったからだ」・・・アレス

「俺はここに来てよく魚を観察している」・・・アレス

「魚を?何故だ」・・・オズワルト

「俺達は人間だが動物だ。他の動物や生き物でも構わないが、魚が一番説明しやすいと思ったからだ」・・・アレス

「何の説明だ?」・・・オズワルト

「俺達、人間の一生についてだ」・・・アレス

「急にどうしてそんな話が?とは思うが聞こう」・・・オズワルト

「一人の人間も一匹の魚も同じ運命をたどる。そう思わないか?」・・・アレス

「俺達人間は確かに個性もありばらつきもある。それは魚も違わない。魚の一生について説明しよう」・・・アレス

(さけ)とかが分かりやすい例えかな?鮭は自分が生まれた川で育つ。そして大きくなると海へ行き、そして産卵する頃になると元の川に戻って来る。何故だと思う?」・・・アレス

「深く考えたことはないな」・・・オズワルト

「実は簡単な事なんだ。鮭は自身が川で生まれてからは自然界の脅威にぶつかる。弱肉強食の現実に。そしてある程度自身が大きくなると、自身の腹を満たすため、より大きな餌を求めて大海原(おおうなばら)に出る。そこには未知の世界が待っていた。より多くの餌が待っていたと同時に自身も容易に餌となり得た。世界中の海どこへ行こうが結局同じだった。つまりは帰る場所、安全な場所はこの世になかったのさ。だから、せめてたとえ元の川で弱肉強食の現実が待っていたとしても自身がなんとかここまで大きくなれた現実(・・)に従って自身の子供も安全に大きくなって欲しいとの思いを込めて、川に戻る途中であんなに激しく傷つきながらも、そして産卵を終えたら死んでいくと分かっていながらも戻ろうとするんだ。確かに種の保存の本能が働いているかもしれないがそこには意志を伴っていると思わないか?」・・・アレス

「確かに」・・・オズワルト

「俺達人間も魚と同じだ。若い頃は人が多い場所へ仕事がある場所へ、金がある場所へと向かう。だけど世界中、旅をしてもどこにも安寧な場所なんて存在しない。だから人間も歳をとると、あえて人から離れて住む。もしくは不満がありながらも自身が育った場所へと戻るようになる」・・・アレス

「確かにそうですね。お年寄りはよく人と離れた場所に住んでいます」・・・レオノーレ

「確かに人も魚も同じ運命をたどるかもしれない。だけど、そこには各々のドラマがあり、運命に流されてたどり着いたものとはとても思えない。結末が同じになろうが俺達は自身の考え、意志の下で選んだ末の結果であって欲しい。少なくとも俺はそう信じている」・・・アレス

「言われてみれば、人の一生は多くの人が一緒ですね。だけど、辿(たど)り方は皆違う。」・・・レオノーレ

「そうそう。俺達には辿(たど)る方法が残されている。それを選ぶことは自身で出来る。」・・・アレス

「そうですね」・・・レオノーレ

「そうだな」・・・オズワルト

「一度しかない人生、生を受けたからにはたとえ死が訪れ、無に()すと分かっていようと生きて最期まで見届けよう」・・・アレス

「自分の選択、自分の意志で」・・・アレス






時間(とき)は流れて・・・


「アレス、今が好機だ」・・・オズワルト

「アレスさん、ラストチャンスです」・・・レオノーレ

「これで最後だ」・・・アレス


【剣の必殺(参)・・・天上天下唯我独尊『てんじょうてんげゆいがどくそん』→天上天下唯我独尊の8文字と同時に相手の8つの急所に斬撃を浴びせる必殺技。必殺技を発動すると同時に以降の自身の全ステータスを2倍にブーストし、喰らった者はダメージ『攻撃力*30-相手の防御力=だいたい与えるダメージ』と共に、(相手は)スキルを3ターン封印される】


「人間の生命力を()めるなよ」・・・アレス

俺は剣の必殺(参)のスキルを発動する。


「天」

「上」

「天」

「下」

「唯」

「我」

「独」

「尊」


俺は天上天下唯我独尊の8文字と同時に敵ボスの8つの急所に斬撃を浴びせる。


「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ」

「マサカ、サイゴ…ニ、ヒックリ…カエサ…レル……ト…ハ」



「人間の可能性を見誤ったな。俺達の最終勝利だ」・・・アレス

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

アレス


男子学生で本編の主人公


前衛で剣を扱う戦士


は選抜の特別任務を遂行できるほどの才能限界値を有していた。


とある事件を契機に世間平均では7あると云われている才能限界値5にまで落ち込んでいる。

オズワルト


男子学生で見た目は長身で顔立ちが整っている


性格も気配りの出来る男で人望が厚い。優秀な後衛の魔法使い

レオノーレ


エルフ女子学生で人間との意思疎通得意でない。見た目はアレス曰く、可愛いらしい

森で育ったこともあり、夜眼利くを扱うのが得意。前衛も後衛もカバーできる中衛の狩人で弓使い。

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み