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文字数 1,053文字
そう、マァ君両手で優しく包み込むように彼女の手をとった。
瞬間、
っ?!?!?!
何だか不思議な感覚が指から肩までを一気に駆け上がり首から脳天までジグザグの螺旋状に突き抜けた。
マァ君自慢じゃないが家族親戚以外の女性の手に触れたことがない。だから先輩の手が他の人達の手とどのように違うのかよく分からないし上手く言葉に出来ないけども…。
今の
痛みのような、
「…古川君、そろそろいいですか?」
手をとったまま硬直していたマァ君を気遣ってか、
「あ?!すみません…き、綺麗な手ですね…温かくて気持ちいいです。」
一瞬、気が遠くなっていたのを誤魔化したいのもあったけど本心がすごく口から漏れた。
「…あの私、そろそろ…」
「朝練ですよね、もうひとつ、もうひとつだけいいですか?」
マァ君はなおも先輩を引き止めた。これだけはどうしても確かめておきたい。
「…でも、本当にもう行かなくては…」
先輩は真面目なので早く練習したいのだろう。
「一瞬です!一瞬ですみますから!」
しつこくするのは悪いとは思うがマァ君ここはねばった。
「俺の手、先輩の手で叩いてみてください。」
そう言ってマァ君は自分の手のひらを顔の高さにかまえた。
「…古川君の手を叩けばいいんですね?」
「はい、ただし一回だけです。絶対に一回で止めてくださいね。」
「分かりました。」
「あ、待ってください!」
マァ君は急いでポケットからスマホを取り出した。
パチン!
と一回、軽やかに乾いた音が鳴る。
たったひとつ打っただけだった。
だが、そのたった一回で世界が転じた。
そこに散らばったのは音よりも、むしろ光…。
「わっ?!」
これだ!この光だ!
マァ君は本能的に目を閉じていた。だが網膜にハッキリと燃えるように残像が焼き付いている。閉じてもまだ眩しい。
足元がふらつく…、立ち眩みのような状態になっている。
「古川君、大丈夫ですか?」
視界が戻るとマァ君は
彼女が倒れそうなマァ君を支えてくれたのだろう。先輩と密着している。なんたる幸運よ…だが、今はそれを堪能している場合ではない…。
「…先輩…じつは俺…おれ…古沢です…。」
そこでマァ君の意識は闇に刈られた。