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文字数 1,042文字
が、胸を掴まれた江草 さんは何事もなかったように演奏を続けている。
――…えっ!?気付いていない?
鈍感なのだろうか、いやそんなバカな…。
あれだけハッキリと確実に明白に触っちゃっている。しかもさらにその手を上下させたり左右させたり手のひらを開閉したりしている。
――全く!本当に何をしているの!!
いや何をしているのかは見たままだ。彼は好きな女子生徒の胸に触っている…。
じゃなくて何故そんなことを?
多分触りたいから…か。
それもあるのかもだけど…何か違う。
確かに古沢君 は変わっている。欲望に忠実で歯止めが聞かず浅慮な行動をとることもある。
どうしようもない程、彼は自分に正直なのだ。
だが、"正直 "とは実は善悪も優劣も示していない言葉である。悪を働きたい衝動に正直であればそれは悪人だし、ダルいから怠けたい気持ちに正直であればそれは劣等生である。
が、古沢 正直 の正直 はそんなんじゃない。
私が知る彼の一番の美点、それは正直 である以上に誠実 であることだ。
この土壇場で、ただ触りたいからというだけで江草さんの胸に触れたりするだろうか…。
…
……
する気もする。
でも、でも、私には何故か、今回の古沢 君の行動はもっと別の意味を持っている、彼はもっと別の目的をもってそうしているような気がしてならない。
そう思ったとき、
「キャアアアアアアアアア!!!」
悲鳴が上がった。
声の発生源を探る。
江草 さんだ。
彼女は頭を抱えるようにしてしゃがみ込んでいた。
私はずっと見てた!
そして理解した。
古沢 君の目的を。
彼は江草 さんの胸をひとしきり触った後、その手はお尻に伸びひとしきり触り、その後に足、二の腕、脇、二の腕、首のあたり、二の腕、と順に触っていき、そして耳にほんの少し触れた瞬間彼女に劇的な変化が起きたのだ。
ビクッと跳ね上がると同時に悲鳴を上げしゃがみこんだのだ。
劇的な変化と言えばもうひとつ…
――演奏が止まった。
全校生徒を踊らせていた吹奏楽部の演奏が止んでいたのだ。
まさに古沢 君はこれを探していたのだ。
無心に、というより放心したようにタンバリンを叩き続けていた江草 さんを制止させる方法…。
"耳を触ること"
そして江草 さんのタンバリンが止まれば、演奏自体が止まり、踊り狂ってたタンバラー達も止まるのだ。
――古沢 君!グッジョブ!!
が、そう思ったのも束の間だった。
「コイツ変態!」
「連 のこと触ってた!」
「なにチョーきもい!」
「捕まえろ!」
口々に怒鳴る数名の吹奏楽部員に古沢 君が取り押さえられていた。
――…えっ!?気付いていない?
鈍感なのだろうか、いやそんなバカな…。
あれだけハッキリと確実に明白に触っちゃっている。しかもさらにその手を上下させたり左右させたり手のひらを開閉したりしている。
――全く!本当に何をしているの!!
いや何をしているのかは見たままだ。彼は好きな女子生徒の胸に触っている…。
じゃなくて何故そんなことを?
多分触りたいから…か。
それもあるのかもだけど…何か違う。
確かに
どうしようもない程、彼は自分に正直なのだ。
だが、"
が、
私が知る彼の一番の美点、それは
この土壇場で、ただ触りたいからというだけで江草さんの胸に触れたりするだろうか…。
…
……
する気もする。
でも、でも、私には何故か、今回の
そう思ったとき、
「キャアアアアアアアアア!!!」
悲鳴が上がった。
声の発生源を探る。
彼女は頭を抱えるようにしてしゃがみ込んでいた。
私はずっと見てた!
そして理解した。
彼は
ビクッと跳ね上がると同時に悲鳴を上げしゃがみこんだのだ。
劇的な変化と言えばもうひとつ…
――演奏が止まった。
全校生徒を踊らせていた吹奏楽部の演奏が止んでいたのだ。
まさに
無心に、というより放心したようにタンバリンを叩き続けていた
"耳を触ること"
そして
――
が、そう思ったのも束の間だった。
「コイツ変態!」
「
「なにチョーきもい!」
「捕まえろ!」
口々に怒鳴る数名の吹奏楽部員に