第4話 初めての星、それと王子様?

文字数 2,491文字

 考えた結果、私にも書けるんじゃないかと思ったのが魔法のある世界を舞台にしたミステリ。書き上げた分量はまだまだ短編の範囲内だったけれども、タイトルの方は流行り?に合わせて長くしてみることに決めた。こんな感じ。

『S級魔法使いの私が何でもできるせいで密室殺人の犯人にされてしまった件』

 他の人の作品にはもっともっと長い題名の物があるから、たいして長く感じないけれども、今までの私の流儀からすれば異例の長さだ。うー、凄く恥ずかしい気がする。
 それにこうしてタイトルを長くすると、困ったことが一つあった。粗筋欄に書く内容がなくなってしまったのだ。でも前回の経験から粗筋はあった方がよさそうなので、無理にでも埋めておこう。タイトルそのまんまを書くのでは芸がないから、「魔法があれば何でもできる、完全な密室での殺人も簡単簡単。――って、私、やってませんから!」で始まるしゃべり口調で通してみた。
 するとそれがよかったのか、それともファンタジーのジャンルで登録したのが効いたのか、PVの出足は好調だった。あくまでも前回比だけどね。星も感想も付かないけれども、第一作よりは好感触。しばらくこの路線で行こうと思い、どうせならシリーズ化しちゃえと、次は『S級魔法使いなのでアリバイの証明ができません!』という風にしてみた。
 主人公やその他レギュラーメンバーのキャラはより分かり易くデフォルメ、かつちょっと奇抜なものに。あと、独自の扉絵を付けた方が人目を引きやすいみたいなので、絵心はないけれどもお絵かきソフトを使えば何とかなるだろうと、がんばってみた……が、描けなかった。しょうがないから、三角と四角と丸、それに直線を組み合わせて、ほうきに跨がって空を飛んでる魔法少女っぽい形を作り、扉絵にしてみた。どちらかというとやじろべえに近いかもしれないけど、まあ初めてにしては上出来よと自分を慰め、思い切って採用した。
 そういった細々とした対策が実を結んだのかな。三作目は前よりも反応がさらによく、初めて一日でPVが二桁になった。まだまだのレベルなのは分かってるけれど、ゼロだったスタートに比べたら格段の進歩で、嬉しい。
 すると前の作品もちょっと読まれるようになって、そしていきなり感想が付いた。星もまだもらえていないのに何で?と思ったら。
<シリーズ物でもタグ付けしていないと分かりにくいですよ>
 という、お話の中身ではなく、サイトの機能に関する指摘だった。それでもありがたいお言葉に聞こえた。実際、シリーズ物の一作目に描いたからと、二作目では省いた事柄がいっぱいあった。二作目から入った読者の方々には、分かりにくかったろうと遅まきながら反省。なので使い方を教えてくれた人にも感謝のレスをした。
 すすき野ヶ原透(のがはらとおる)さんという名前で、男の人らしい。分かんないけど。でも王子様みたいなイメージを持ってしまった。
 登録された日は三年くらい前で、作品は九つ。長編が三つ、短編が三つ、ショートショートが三つというバランスのよさ。ジャンルもファンタジー系が三つ、ミステリ・ホラー系が三つ、恋愛物が三つ。長さとジャンルがうまく振り分けられている。
 長編の一つは連載中のファンタジーで未完、もう一つは休載中のミステリでやはり未完。残る一つ、恋愛物だけが完結していて興味を持ったんだけど、大人の恋愛っぽいのでちょっと尻込みしちゃった。
 代わりに短いのをと、ショートショートのホラー『けがれ』と、短編のミステリ『空を飛べなくても』に目を通した。『けがれ』は怖いというより落語の小話みたいで、駄洒落も入っていて楽しめた。私の専門でもあるミステリの方は、私の作品に興味を持ってくれたのが分かる内容だった。実写映画で魔法少女役を射止めた子役の女の子が、事件に巻き込まれて解決するというもの。ストーカーが登場して怖かったけど、最後はちゃんと論理的に解決してすっきり。
 私は少し時間を掛けて、短いけれども感想文をこしらえ、それぞれの作品に星と共に送ってみた。初めてのことなので凄くどきどきした。
 三日ぐらいして、感想に対するお返事がありましたというお知らせメールを見付け、またもどきどきしながら返事を見てみた。
 どちらも感想と星をありがとうで始まり、以下、個別の返事になっていた。
 ……読む内に、これはちょっと怒らせてしまったのかなと、胸と喉が痛くなって来ちゃった。というのも、『けがれ』に私は「こわごわ読み始めましたが、終わってみると落語みたいで楽しい作品でした。」的なことを書いたのだけれども、対する透さんの返事が<こわくなかったですか。うーん、辛いなあ、残念>とあった。全然関係ないけど、「辛い」を最初「からい」と読んで、意味が分からずクエスチョンマークを盛大に浮かべたのは内緒よ。
 もう一つの『空を飛べなくても』については、私、大絶賛したんだけれども、最後の方でちょっと付け足したの、「似たような設定でもこんなに違いが出るんだって感心しました」みたいなことを。ここにも透さんは引っ掛かったみたいで、<似てるかな。まあ、キャラクターの設定は似てるか>とやや素っ気ないレスポンス。私としては「似た設定でも面白さにこんなに差がつくんだ」って言おうとしたのだけれども、言葉が足りなかったみたい。
 誤解されたとしたら悲しい。くどくどと説明することも考えないではなかったわ。けれども文面に苦労する内に時間が過ぎちゃって、それに透さんからは後日、私の三作品に星をもらった。この様子なら蒸し返さなくてもいいかって判断して、星のお礼だけ言っておいた。
 感想のやり取りに頭を使ったから忘れそうになっていたけれども、これでとにもかくにも初めての星ゲット! それも魔法少女探偵には二つずつくれたから、合わせて五個たまった。
 初めてアルバイトをしてお金をいただくときって、こんな感じの気持ちになるのかな。なんてことを考えながら、翌日、学校でこのことを明菜ちゃんに知らせようと思った。

 つづく
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