第12話 火を噴く白球‼️

文字数 723文字



 夏の甲子園大会、準決勝第一試合は凪浜が3−1で勝利をおさめて決勝進出を決めた。
 つづく第二試合、桜台VS雷音寺の対戦。
 桜台のスターティングメンバーがスコアボードに発表されると、スタンドからざわめ
きが起きた。
 1番 日野海渡。
 代打ではない。いきなり1番バッターに起用されたのだ。
 ……ということは、この試合、レギュラーでフル出場するというのか?
 観客のみならず、記者やカメラマンたちも驚きの表情で互いの顔を見合っている。

「驚いたな、いきなり一番で日野海渡を打席に立たせるとは……。しかし、日野はやれ
んのか?」
 バックネット裏の記者席で緒方がだれにいうともなく口を開いた。
「いや、さすがにフル出場はありえないだろう。これは獅子王の出鼻をくじく作戦とお
れはみたね」
 隣席の梅宮が読みを披露する。
「なるほど。しょっぱなガツンと食らわせて退場。そのあとはいつものレギュラーメンバ
ーにまかせ、桜台のペースで試合を進めようとする肚か。
 なかなか武藤監督も策士だな」
「相手は力押しでぐいぐいくるチームだ。このぐらいの作戦は立てなければ勝てんよ」
 先ほどから落雷のような音がキャッチャーミットから響いてくる。
 獅子王の重く速い球が炸裂している。ここまでたった一人で投げ抜いているのに、球威
は少しも衰えていない。まさに無尽蔵のスタミナを有しているかにみえる。

 投球練習が終わり、海渡が右打席に立った。
 主審の「プレイボール!」のコールとともに試合開始のサイレンが高鳴る。
 そのサイレンの音が鳴り終わらぬうちに獅子王は右腕からボールを投げ下ろした。
 唸りをあげて白球が火を噴いた。
 獅子王の火の玉ストレートが獣の雄叫びをあげていた。



       第13話につづく


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