50. 死体と死闘
文字数 2,286文字
バキッという破壊音がした。突然のことに一瞬、血の気が引いた。居間に武器を飾っていた主人。運悪く
なんて力 ⁉ あの腕に捕まったらと思うと、ぞっとする。それに、ひどい臭い。シャナイアはその迫力と耐えがたい
魂の抜け殻が五体、ゆっくりと迫ってくる。動作は鈍いが、それらは障害物があっても目もくれず、ぎこちない動きを止めることなく近付いて来る。
やってやるわよ、化け物だろうが何だろうが・・・!
ほとんど
だがシャナイアはしめたと思い、冷静に左へ
次は、ひょろりとした死人が正面から向かってきた。眼球は
シャナイアは腕を上げて目の前で剣を構えた。
ところが、死人を再び葬ろうどころか、それは何の痛手も受けてはおらず、真下に落ちた自分の顔を蹴り飛ばして、なおも両腕を突き出してきたのである。
「やだうそっ、こんなのなしよおっ。」
どこまでも反則と言いたげな悲鳴を上げ、シャナイアはあわてて飛び
だが敵は一体ではない。
着地すると同時に、左右から気味の悪い手が伸びてくる。
腐った身体は、ドアを破壊された時の馬力が嘘のように
床に落ちた腕が、なんと骨が見えている五本指をカタカタッと動かして、歩き出したのだ。それに
シャーナと泣き叫ぶ声が部屋中に響いた。目隠しするようにミーアを抱き寄せた夫人も視線をそらし、主人は恐怖のあまり
身動きできない体に、さらに二体が襲いかかった。
剣はまだ手元にあるが、もはや勝ち目はない。それどころか、この絶望的な状況に心を折られて、力を入れることすらできない。
シャナイアも思わず観念しそうになった、その時。
不意に飛び出してきたキースが、一体に体当たりを仕掛けた。もう一体の巨漢には、フィクサーが爪をたてて頭につかみかかっている。
一体を攻撃したあと、キースはシャナイアの足をつかまえている腕と、そばに落ちている頭をも横殴りにたたき飛ばしていた。そして、シャナイアの隣で威嚇の姿勢をとった。
一方のフィクサーも、しきりに手を動かしてくる巨漢の頭に、翼をバタつかせてしつこく
「キース、フィクサー。」
そうだった・・・ほかにも戦力になるものはいた。シャナイアは勇気と気力を取り戻して起き上がり、再び剣を握りしめた。そして
「あなた達もいたのよね、助かったわ。」
だが、動く
フィクサーの悲鳴・・・!
見ると、
シャナイアが動くよりも早く、キースがその巨体に突進していった。だが、倒れたのは反動を食らったキースの方。その一瞬できた
すぐさま剣を水平に構えたシャナイアは、不意に気付いた。両手で武器を持ち上げている今、その左の手首にはめているものが何であると言われていたかに。
それは、ワインレッドの宝石が光るブレスレット。カイルが確か、こう言っていた。
太陽神アルスランサーの使徒が宿る精霊石・・・と。
「ちょっと、私はいちおうあなたの代わりなんでしょ ⁉ あなた、死ぬわよ、いいの ⁉」
シャナイアは、自分の体を見下ろして怒鳴った。本気でそんなことをする自分が信じられなかったが、もう神にもすがる思いだ。
「何とか言ってみなさいよ !」
すると、思いもよらないことが起こった。
ほとんど
シャナイアはアッと息を呑み、思わず目を閉じた。