第4話 生まれと育ち

文字数 1,120文字

 ゲーテには勝算があった。それは、ニーチェという無二の天才の存在だ。
 ゲーテとクリスティアーネとニーチェは、同じ年齢である。六歳の時、共に黄金薔薇十字団に入団した。だが、その生まれは三人とも異なる。
 ヨハン・ゲーテは、中級貴族の子息。
 クリスティアーネ・ヴルピウスは、バラ十字会員の平民の娘、
 フリードリヒ・ニーチェは、孤児院から拾われてきた。
 生まれや遺伝が違うからだろう。三人は同じ境遇にいながら、性格も趣味も、人生の楽しみ方もが全く異なった。
 クリスティアーネは、十六歳までは順調に錬金術師としての力を伸ばしていた。だがある時、急にオーラが出せなくなった。
 オーラというのは、体内で作り出すエネルギーのことだ。錬金術師は、オーラと創造性がなくなると、錬金術で作成した道具、ファンタジーを一切使えなくなる。
 オーラが出せなくなると、通常は黄金薔薇十字団を辞め、バラ十字会員に戻るケースが多い。だが、彼女は黄金薔薇十字団に残った。現在では、ゲーテの口添えで、ゲーテの秘書兼、第一研究所の運営サポートをおこなっている。
 ニーチェは、団長のクリスチャン・ローゼンクロイツ自らが、孤児院から連れてきた逸材だ。過去を話さず寡黙だが、天才という呼び名が高い。出世のことなど考えず、いつでも研究に心血を注いでいる。若干二十二歳にして、すでにADBになっている。
 ADBとは、アルキメスト・ドリームメーカー・ランクBの略だ。それぞれ、錬金術師としての格をあらわしている。
 最初のAは、錬金術師を示すアルキメストのA。三番目のBは、GからSSSまでの錬金術師としてのランク。そして二番目のDは、ドリームメーカーの略だ。
 錬金術師は、三つの特徴に大別される。一番多いのがP。フィロソフィア。哲学者。賢者の石を使用する物理タイプだ。戦闘が得意な者が多い。
 次がF。ファンタジスタ。魔法使い。錬金された道具、ファンタジーを使いこなす特殊能力者だ。
 そして、一番少ないのがD。ドリームメーカー。道具屋。ファンタジーの製作研究に携わる者。一般的に広く知られている錬金術師は、このタイプである。
 ニーチェが飛び抜けたランクへと昇級していく中、ゲーテには、ニーチェほどの錬金術研究の腕前はなかった。APDになってから、四年以上ランクが上がっていない。
 だが、体が大きい。賢者の石の扱いができる。剣術レベルも高い。声も大きく、よく通る。性格も明るい。団員たちの中では英雄との呼び声も高い。若くして早くも幹部候補として取り上げられ、カリスマの片鱗を醸し出している。現在は、第一研究所の副所長だ。
 ゲーテとニーチェは助け合い、二十二歳で、かなりの地位にまでのし上がっていた。
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登場人物紹介

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ

APC 187cm90kg 赤マント

主人公。正義感溢れる好漢。うちに秘めたる野心の塊。研究者として入団したが、錬金術師としての腕前はCランク止まり。武芸に優れている。体格が良く、人から愛され、尊敬される性格。人身掌握がうまいので、幹部候補生になる。クリスティアーネのことが好き。ニーチェのことを親友だと思っているが、嫉妬心も抱いている。

フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ

ADB 179cm 60kg 赤マント

黄金薔薇十字団に買われた捨て子。CRC団長のお気に入り。純真。研究家気質。真理を探究している。ストレスはうちに秘めるタイプ。騙されることが大嫌い。ゲーテだけを親友だと思っている。同期のクリスティアーネに好かれているが、興味ない。

カミーラ

155cm 40kg 吸血鬼と呼ばれる美女。気付いたらリアルにいたタイプ。はぐれアルカディアン。古城に住み着く。

幻想を見させることができるが下手くそ。

顔も体も大人っぽいが、背だけが低い。コンプレックス。いつも13cmのヒールを履いている。

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