密室灯籠

[学園・青春]

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24件のファンレター

「誰かの記憶には残っていたいからさ、書き残しておくよっ!!」
 これが僕の〈私小説〉。
 私小説とは、ほぼそのままのことを書く小説のこと。昔、僕が駆け抜けた日々を綴ったよ。  
 ハイデフなフリーキーフロウで、響けバイブス!!

表紙はくめゆる先生(@kumeyuru)に描いていただきました!!

ファンレター

密室の中を流れゆく灯籠

エピローグまで読み終わりました。今は……密室なのに、同時に無限の広さを持っている空間をゆっくり流れる灯籠を眺めているような読後感に浸っています。
こうした読後感は、自己を狭く深く掘り下げていくことによって、いつかとんでもなく広いところへ突きぬけてしまう私小説という小説形式の醍醐味でもある気がします。

自己を私小説の中に生かす(あるいは転生させる)ということは、現実世界の自分を少しずつ殺していくことであるのかもしれませんね。実際この作品には、いつもどこかに「死」の影が揺曳している気がしました。

バンド活動を通して知るプロとアマチュアという二つの世界。二つの世界の狭間にいる主人公たち――どちら側に入るか(あるいは入ったと思うか)によって、その関係性に生じる亀裂、裏切り……。小説としてすごく読み応えがありました!

印象的な場面を数え上げればきりがありませんが、137話で三つもデート(?)が重なった時、ミシナさんと過ごすことを選んだ主人公のエピソードが、私は特に好きです。また、最近衝撃的なニュースとなった大学教授の謦咳に接したエピソードも、今読むと格別な味わいがありますね。

この傑作が作家成瀬川るるせさんの代表作の一つとして、いつか必ず、もっともっと強い脚光を浴び、もっともっと広範な読者に読まれる日がくると私は信じています‼

返信(1)

南ノさん、最後までお読みいただきありがとうございました。
作家というのは、「この作品を書くためだけに、この作家は生まれてきたのではないだろうか」と思える作品を書くことがあります。僕にとってこの作品は、太宰治の『人間失格』です。一応モチーフとして青春を扱うので、えぐいシーンはいくつもカットしていますが、まとわりつく「死」は、太宰や芥川の全作品を何度も通読したことが大きいです。
高校時代から太宰と芥川が大好きでしたが、全集を買うお金も青空文庫もその頃はなく、ずっとあとになってからの全集の、何回にもわたる通読で、僕はこの『密室灯籠』をどう描き出すかを考えていました。書く力量がなく、執筆出来たのがいい歳した今ごろになってしまいましたが(タイトルの元ネタは太宰治『ろまん灯籠』というわけです)。僕は、でも、まだ生きています。
夏目漱石の遺作に『明暗』があります。暗い部分だけ執筆して、明るい後半を書く前に、彼は亡くなってしまいました。また、太宰治にも『グッド・バイ』という絶筆があります。これも『明暗』と同じく、作品の内容が転調を迎えるちょうどそのあたりで終わっています。
でも、僕はどうやら、また生き残ってしまったようです。死にたがりのクセに、結局生きています。僕は正直、この作品を書いたあとの人生のことを考えていなかったのです。20年間ある意味構想を練っていた小説が終わったあと、どう生きるか、まるで人生設計すら考えていなかった。でも、僕は漱石の『明暗』の続きも、太宰の『グッド・バイ』の続きも、読みたかった。これらのレターや友人たちとのやり取りが芥川の『或る旧友に送る手記』になってはいけないと、思うのです。
傑作と仰っていただけて身に余る光栄です!! そして「代表作」ではなく「代表作の一つ」と仰っていただけたことも、嬉しいです。まだまだこれからも、生きて、書いていこうと思います。本当にありがとう、そしてこれからもよろしくお願いいたします。がんばるぞーーーー!!