夢老い人の独り言

作者 加藤猿実

[日記・個人ブログ]

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24件のファンレター

老人は死なず、ただ呟くのみ
第100談で終わらせていただくことになりました。

歳をとると早起きになります。まだ誰も起きてないので、独り言を呟きます。
日記と言うより雑記。内容は何でもあり。突然の思いつきや、よくある年寄りの昔話や自慢話も?
夢を追いながら老いていくと、どんな日常が待っているのか。
これからの超高齢社会に必須の老人研究の貴重な資料にもなるかもしれません。(笑)

ファンレター

映画と仏教とSFと陰謀の話題などを拝読しました

加藤さん、こんにちは。
右目の打撲、大変な怪我だったのですね。現在は執筆できるまでに回復されたようで、とても良かったです。

加藤さんは、唯物論者だったお父さまに対する反発から仏教に興味を持たれ、「全ての生類に魂がある」と信じるに至ったのですね。
「第14談 死後の世界と仏教」を拝読して、教典に対する学びとさまざまな現実での体験を通して、ご自身の信念を獲得されたのだな、とよく分かりました。
ブッダは、永遠不変なるアートマン(霊我)を認めず、全ての存在を因縁所生として考え、無我思想を説いた、と理解しています。
ブッダが説く輪廻の主体は、実体としての「我」あるいは魂ではなく、「業」であり、生命が「業」に従って絶えず変転、流転していくことが輪廻なのだ、という考えかたは興味深いとは思いますが、納得するのは難しいなぁと以前から思っていました。
和辻哲郎は『原始仏教の実践哲学』の中で、無我思想に基づく輪廻転生思想に反対し、輪廻思想が成立するためには「自己同一的な個人的或る者」、すなわち前世と来世を貫く同一の「我」がどうしても必要だ、と書いていて、それもそうだなと思ったりしました。
加藤さんが「仏教を理解するのは、今のように教育が行き届いていない時代には難しすぎ」とおっしゃるの、その通りですよね! 以前に読んだ、上座部仏教について解説した『タイ仏教入門』でも、出家者集団は「エリートの宗教」なので、在家者の宗教とは全く別物であると説明されていました。
阿弥陀仏のお慈悲におすがりしましょう、という教えは唯一神信仰と似たものがあるなと思うのです。
キリスト教において、黙示録の終末思想に基づく千年王国運動というのが政情不安になると流行する(現在もQアノン信者含む陰謀論者の間で大フィーバーしてますね!)のですが、仏教にも一部では千年王国的性格があるように見えます。ミロク仏や転輪聖王を待望する信仰です。これって、メシアを待望する信仰と似ていると思うのですが、どうでしょう。

話変わって、加藤さんは「映画オタク」を自認されるほどの映画好きなのですね^^ 単館系映画が特にお好きとのこと。
ティム・バートン監督作品はわたしも好きですよ。『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』は愉快ですよね! アリスのシリーズもすばらしい映像美で大好きです。
『 エド・ウッド』はとんでもない駄作(ほめ言葉)だと思いましたが、これがエド・ウッド監督らしさなのでしょうね(笑)
あまり知られてない短編作品だと、バートン監督が制作に携わった短篇アニメ『9 〜9番目の奇妙な人形〜』も映画館で観ました。これもユニークで印象に残っていますよ。
今までは、芸術性の高い映画やドキュメンタリー映画は上映場所がかぎられていて、タイミングがあわないとなかなか観れませんでしたが、最近はオンライン配信のおかげで手軽に観られるようになり、うれしいですね!

『苦手な人のためのSFセレクション』の「その6『ソラリス』」も拝読しましたよ。わたしはタルコフスキー監督の「惑星ソラリス」を観て、それから新訳版のレムの『ソラリス』を読みました。
「仏教的な世界観が鍵」というのは、考えもしなかったので、とても面白い読み解きだなと思いました。
タルコフスキー監督の映画は『ノスタルジア』も観ましたよ^^

長々と失礼しました。加藤さんの映画エッセイ、またお読みしたいです! 引き続きよろしくお願いいたします。

返信(1)

mikaさん、ありがとうございます!
読んでいただいたうえにイイネも頂戴したようで、感謝に堪えません。

仏教のこともよくご存じで、幅広い知識と深い洞察力に感服いたします。

仏教もキリスト教も他の宗教も、長く世界で信奉される宗教は、学問としても掘り尽くせないほど深く、語り尽くせないほど多くの諸説がありますね。私は真言密教に出遭うまで、日蓮上人や親鸞聖人が天台宗で修行したことさえ知らなかったほどの宗教音痴、歴史音痴でしたので、今でも知らないことばかりです。

かつての私の師は「仏教は学ぶものではなく修めるものである」として、教授として招聘したいと請われた仏教系大学からの誘いを固辞された方でした。その方は「仏教を学問として追求すると頭でっかちになって実践が伴わなくなる」と、哲学的な仏教の求め方には懐疑的でした。
仏教学者の中には、龍樹=ナーガール・ジュナ以降の大乗仏教経典は全て偽経であると考える方もいます。しかし、もし釈尊=ゴータマ・ブッダが説いた時代の原始仏教のみを真の仏教とするならば、釈尊の入滅後に編纂された初期の経典群でさえ釈尊の言葉通りであるとは考え難く、全ての経典が偽経となってしまう可能性さえあります。
私はそういう考え方を、かつて「原理主義的仏教」と呼んでいましたが、書いたのはこれが初めてかも知れません。たいして実践もしていない自分は、仏教を学問として真剣に研究している方々に対して、師の威を借りて声をあげて批判することなどとても出来ませんから。

自分は幼い頃から中道に身(立場)を置くことを信条としてきたため、自身が信じる宗派だけでなく、興味が湧くと自分と反対の立場の考え方も知りたくなります。例えば、日蓮上人がなぜ真言宗を真言亡国と批判し否定したのか? など。
そんな訳で、松岡正剛さんの『千夜千冊』等を参考にしながら他宗のことや他の宗教のことも広く浅く表面だけなぞってきたわけです。

私の勉強や研究は学術的に深めていくような高尚なものではなく、極めて個人的な興味本位のもの。
「なんで? なんで?」と聞きたがる子どもと同じです。
それは、宗教だけではなく、音楽から宇宙物理学まであらゆる分野に共通していると思います。
録音や映像、写真のことやMacのこと、クルマのことなど、部分的に深掘りしたところはありますが、基本的に広く浅くが私の人生。
そんな薄っぺらな人間なので、自分の過去の投稿を読み返すと知識や考察の浅薄さが滲み出ていて、冷や汗の連続です。特に若い女性の容姿について語った投稿など、ルッキズム・ジジイと気味悪がられても仕方ないかな……と、投稿を消したくなりました。(苦笑)

それに国語力が乏しいため、言いたいことが正しく伝わらないことも多々あることを常に感じております。

実はmikaさんがファンレターに書いてくださった文を読ませていただいた時に冷や汗が出ました。
「『仏教を理解するのは、今のように教育が行き届いていない時代には難しすぎ』とおっしゃるの、その通りですよね!」

この引用文の部分、「今のように教育が行き届いていない」ではなく「今のような教育が行き届いていなかった」とするべきでした。
「今のように(読み書きなどの基本的な)教育が(民衆に)行き届いていない(平安時代や鎌倉時代などの)時代には……」と意味して書いたのですが、ここだけ読むと、「今(現在)」が「教育の行き届いていない時代」と読めてしまいます。

確かに今の時代にも教育が不十分と感じることは多々ありますが、高校時代に落ちこぼれて殆ど勉強らしい勉強をしなかった自分には、偉そうにそんなことを言える資格なんてありません。
当時の自分を知る人が読んだら、「人並みの予習復習もしなかったくせに随分偉くなったね」と言われてしまいます。(苦笑)

前後の文脈から理解していただけると良いのですが、私は周囲に誤解を与える表現や表記で失敗してきた過去があり、その度に当に国語教育が行き渡っていない(苦笑)自分自身を見返ることになったことを思い出しました。

例えば、「この度、大勢のスタッフが海外出向になったため、 (一時的に本社のスタッフが足りなくなり)Aさんもしばらく(出向先の)こちらには来れなくなってしまいました」と口頭で出向先のスタッフに伝えてしまったことがあります。
()内の必要な事項を省略してしまったために、半分の人は前後の話から意図を汲んでくれましたが、残り半分の人は「Aさんも海外に行く」と思い込み、 そのうちの何人かがAさんに「海外に行くんですね」と挨拶したから、さぁ大変。 Aさんから「私が海外に行くってどういうことですか?」と抗議され、私は慌てました。
これ、小説のネタになるかもしれませんね。転んでもただでは起きないのが老人のしたたかさ?(笑)

これ以上書くと墓穴を掘るだけなので、話題を変えましょう。

映画オタクの件ですが、実は15年ほど前に自分では「卒業した」(笑)と言って、少し映画離れしていました。
仕事が忙しかったことも一つの理由ですが、映画以上のドラマが現実世界で頻繁に起こっていたこともあります。
そのため、オスカーやカンヌの受賞作を含め、話題になった映画でも観ていなかったり、知らなかった作品も沢山。

ティム・バートンは、かつては映画館で購入したパンフレットと後に買ったDVDを順に並べるほどでしたが、『チャーリーとチョコレート工場』で止まってしまいました。その後も観てはいるんですけどね。

単館系映画をよく観に行ったのは、それこそ『メメント』の頃でした。それ以来ノーラン監督だけは20年フォローし続けていますが、私も一番好きなのは『インターステラー』です。
実を言うと、かつて都内のミニシアターに足を運んだように、定年退職したらもっと映画館に行くつもりでしたが、コロナ禍で定年を迎えたため、圧倒的にオンデマンドでの鑑賞が多いのが現実。
そんなわけで、本当の映画オタクや映画マニアからしたら、ただの「映画好きの爺さん」というのが実体でしょう。

そうそう、タルコフスキーで『惑星ソラリス』以外に観たのは『ストーカー』だけです。『ノスタルジア』は未見なので、今度観てみますね。

ところで、mikaさんは素晴らしい書評を書かれていますね。
私はちゃんとした書評は書けませんが、書籍でも映画でも音楽でも、これからはあまり知られていないものを紹介していこうと考えています。例えばmikaさんが書かれた『ラ・トルーリャ』のように。

自分の作品の宣伝をするのはよろしくないのかも知れませんが、『苦手な人のための〜』も一部読んでくださったようなので、お時間がございましたら『ミウノイタナツ』も読んで見てください。
荒唐無稽で笑えました……でも構いません。
mikaさんのような知識人が読まれたらどう感じられるのか、とても興味があります

ものすごーく長くなってしまい失礼しました。(苦笑)
mikaさんの他の作品も少しずつ読ませていただきますので、今後ともよろしくお願い致します。