伊万里Ⅰ 科学者レオンの話

[歴史]

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31件のファンレター

 かつて日本から世界中に運ばれた、「古伊万里」たち。
 その中の一枚のお皿にスポットを当て、オムニバス形式で追う物語を予定しています。

 こちらはその第1話目(全4話)。
 今から約300年前、ドイツ東部のマイセン窯においてヨーロッパ磁器が誕生。発明したのは錬金術師ベトガーとされてきましたが、最近の研究ではもう一人、とある貴族の貢献が明らかになってきました。
 この辺の話は欧米の小説やテレビドラマではたまに取り上げられるようですが、そこに影響を与えた(?)肝心の日本ではあまり知られていないのではないでしょうか。
 というわけで、できるだけ史実に基づいて構成してみました。

 ヨーロッパは近世の始まり。キリスト教の価値観が色濃く残る一方で、多くの著名な科学者を輩出した、まれにみる時代です。そんな空気感もお楽しみいただけますように。
 時代考証等に間違いを発見されたら、ぜひお知らせ下さい!

(表紙画像)
アルブレヒト城(マイセン市)

(主要参考文献)
嶋屋節子「マイセン磁器誕生前史」『藝術研究 第19号』広島芸術学会
ジャネット・グリーソン著 南条竹則訳『マイセン』集英社
マシュー・スチュアート著 桜井直文、朝倉友海訳
『宮廷人と異端者 ライプニッツとスピノザ、そして近代における神』書肆心水
小林素子『近世ドイツの魔女裁判』ミネルヴァ書房

ファンレター

32話(最終話)まで拝読しました

 わ~、彼が生きてて良かった。もうダメかと思っていたから、暗闇の中に光が射してきた気分です。(それにしても、牢獄がきつかったのか、ずいぶんと人間的に成長が感じられて微笑ましく思ってしまいました)
 ユングフェルン稜堡は「乙女の塔」と呼ばれていた、とか実験の最中の「顔の覆い布」とか、さりげなく書かれている知見が凄いですね。灼熱の部屋の描写も圧巻です。滑らかな文章の後ろに隠れた資料の厚みが重厚な読後感を与えている気がします。毎回言っているかも知れないけど、本当にその時代を目の当たりにしている気がします。白磁にたどりくまでの試行錯誤も丁寧に描かれていて、興味深かったです。そして完成したときには私も心の中で快哉を叫んでいました。
 でも、伯爵にそんな過去があったとは、最後の最後で衝撃……。
 マイセン誕生の物語をドラマチックにその時代の匂いに包まれながら読ませていただきました。伯爵やヨハンとお別れがさみしいです。ヨハンもなんだ、コイツ。という印象から、ええ奴やんか~、にすっかり様変わり。可愛い人だと思うようになりました。
 それにしてもネーミッツ、最後まで期待に違わぬ小姑ぶりで、満足しました(笑)
 面白かったです。大満足でした!

返信(1)

不二原さん、この作品、時系列が行ったり来たりで読みにくかったでしょう……にも関わらず最後までお付き合い下さって、本当にありがとうございました。不二原さんだからちゃんと読んで下さったけど、他の人は途中でやめちゃうケースが多いかな。私も書き直そうか検討中です(笑)。
そうなんです。この時代のドイツに関する知識がなくて、かなりいろいろな史料に当たらなければなりませんでした。苦労した分、ちゃんとした形にしたいという気持ちは強く持っています。
最初はヨハンを主人公にするつもりだったんですよ。でもあまりの変人っぷりに、私がついて行けなくなりました(笑)。主人公を伯爵にしたのはそのためなんですが、こっちはこっちで扱いが大変でした。「同時代の科学者たち」の記述については、せっかく調べたけど物語に関係ないからやっぱり削除しようか、と悩んだり。
ネーミッツの意地悪は、伯爵の死後、マイセン窯が稼働し始めてからエスカレートしていったようです。でも不二原さんのコメントで気づきました。こういう悪人は、主人公が見返す形で、すっきりした終わり方をさせた方がいいかもしれません。ちょっと検討します。
不二原さんにアクションを頂けて、本当に幸せでした。ありがとうございました!