通勤地獄

作者 古森 遊

[ホラー]

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2件のファンレター

いつものように会社に向かうため
いつものように駅で電車を待っていた
いつものようにやって来た電車は……

『小説家になろう』の夏ホラー2020参加作品。

ファンレター

今年に限っては、例年以上に虚構の世界のホラーよりも現実の世界の方がホラーだと感じます。

 コロナの方がよっぽど今は怖いですよね。
 今年は怪談話に登場する怪異たちよりもよほどコロナと、コロナに翻弄される人間たちの浅はかさの方が恐ろしく、夏の定番な伝統的怪異たちも出番がなかったのではないかと思ってしまうほどです。

 この作品の良いな、と思ったところは、「コロナ」+「それでも行かなければいけない日本人気質」という部分だな、と。リアルが伝わってきます。

 自分も緊急事態宣言解除後に出社を余儀なくされて、「普通に混雑している電車」に遭遇して「嘘でしょ?」と、天を仰ぎました。(今は以前よりは落ち着いているようには感じますが)
 そして、会社自体も当初は在宅を推し進めようと真剣に取り組んでいたのですが、今となっては「家にいたらみんなサボるんだろ? 会社に来させろ」と言いだす始末で、いろんな意味でリアルタイムの「????」が続いているのですよ。悲しいことに。

 なので、この物語のような通勤クラスターは、虚構を飛び出したこの現実世界でいずれは起こると思ってしまうのです。
 (通勤電車での感染率は低いとテレビのコメンテーターが喋っているのを以前見たことはあるのですが)、本当は今だって感染が起こっていて、でも、感染経路を追うことができないだけなのかもしれません。もしかしたら。

 いやもう、本当に、「それでも行かなきゃいけない」んですよね。
 この部分では台風の接近や、東日本大震災発生直後の輪番停電で、電車が動かない状況にも関わらず当時の上司から「這ってでも会社に来るのが社会人だ」と何度も何度も口を酸っぱく言われたことがありまして、日本人の生真面目さもさることながら、柔軟さを失って型通りの「姿勢」を保たないと評価されないこの国はもうダメだと思ったものです。

 死んでからも繰り返さないといけないのは、死後の世界ではありそうに思います。
 生前の苦しい時間の中に永遠に閉じ込められるのは、ある意味で「地獄」の姿ですよね。哀れだし、可哀想だし……怖いです。自分だったら、こんな苦しみの中に堕ちたくない、死ねば魂は安らかに「無」になりたいと思います。。。

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