伊万里Ⅰ 科学者レオンの話

[歴史]

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 かつて日本から世界中に運ばれた、「古伊万里」たち。
 その中の一枚のお皿にスポットを当て、オムニバス形式で追う物語を予定しています。

 こちらはその第1話目(全4話)。
 今から約300年前、ドイツ東部のマイセン窯においてヨーロッパ磁器が誕生。発明したのは錬金術師ベトガーとされてきましたが、最近の研究ではもう一人、とある貴族の貢献が明らかになってきました。
 この辺の話は欧米の小説やテレビドラマではたまに取り上げられるようですが、そこに影響を与えた(?)肝心の日本ではあまり知られていないのではないでしょうか。
 というわけで、できるだけ史実に基づいて構成してみました。

 ヨーロッパは近世の始まり。キリスト教の価値観が色濃く残る一方で、多くの著名な科学者を輩出した、まれにみる時代です。そんな空気感もお楽しみいただけますように。
 時代考証等に間違いを発見されたら、ぜひお知らせ下さい!

(表紙画像)
アルブレヒト城(マイセン市)

(主要参考文献)
嶋屋節子「マイセン磁器誕生前史」『藝術研究 第19号』広島芸術学会
ジャネット・グリーソン著 南条竹則訳『マイセン』集英社
マシュー・スチュアート著 桜井直文、朝倉友海訳
『宮廷人と異端者 ライプニッツとスピノザ、そして近代における神』書肆心水
小林素子『近世ドイツの魔女裁判』ミネルヴァ書房

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五、魔法か、科学か 拝読しました

 宜興窯は全然知らなかったのでネットで見てみました。ああ、こんなシックな茶色の磁器なのですね。それにしても、伯爵の気持ちをわからない傍若無人なヨハン、天才ってこんなものかもしれませんね。科学的な話になるとキャラより説明に傾きがちですが、血が通っているというか、キャラが立ってますね。伯爵の焦る気持ちとヨハンの冷ややかな対応がとっても面白いです。釜を高温にしたり、試行錯誤の連続で読んでいて「何が突破口になるのか」ワクワクしました。なるほど!!! 釜に関するいろいろな工夫が会話になじんで、すっと頭に入ってきました。(ここらへんの文章的な技術も凄いなあ)
 そして、ドラマチックな展開。謁見の場も、チルンハウスの高揚と、生気の無い王が対比されて絵のようでした。なぜか、いぢわるネーミッツが気に入っています。(絵に描いたようなキャラが立った憎まれ役でがくっと好きになってしまいました)
 面白いです。

返信(1)

不二原さん、宜興窯のことまで調べて下さったんですね。ありがとうございます! 日本にも常滑焼や万古焼など、焼き締めが有名な土地がありますが、マイセンの磁器だと「ベトガー炻器」で検索すると出てくると思います(今も作っているみたいです)。
説明に傾きがち、というのは歴史小説あるあるだと思います。でも難しいんですよね……。「史実」とされているものは、素材としては私は極上だと思っているのですが、やっぱり読み易く料理しないと、他ジャンルの人はなかなか読んでくれない。でもその一方で、説明だらけの小説が、一部の熱狂的なファンに支持されているケースもあるようです。私の作品はコアな歴史小説ファンからすれば「説明不足」と映るかもしれません。
絵に描いたような憎まれ役というのも、物語にはぜひ欲しいところですが、現実にはそう都合よくいないですよね。だからこそネーミッツのような嫌な奴がいてくれて良かったです(笑)。
二人がどうやって突破口を見つけていくか、引き続き見守って下さるとうれしいです^^。