伊万里Ⅰ 科学者レオンの話

[歴史]

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 かつて日本から世界中に運ばれた、「古伊万里」たち。
 その中の一枚のお皿にスポットを当て、オムニバス形式で追う物語を予定しています。

 こちらはその第1話目(全4話)。
 今から約300年前、ドイツ東部のマイセン窯においてヨーロッパ磁器が誕生。発明したのは錬金術師ベトガーとされてきましたが、最近の研究ではもう一人、とある貴族の貢献が明らかになってきました。
 この辺の話は欧米の小説やテレビドラマではたまに取り上げられるようですが、そこに影響を与えた(?)肝心の日本ではあまり知られていないのではないでしょうか。
 というわけで、できるだけ史実に基づいて構成してみました。

 ヨーロッパは近世の始まり。キリスト教の価値観が色濃く残る一方で、多くの著名な科学者を輩出した、まれにみる時代です。そんな空気感もお楽しみいただけますように。
 時代考証等に間違いを発見されたら、ぜひお知らせ下さい!

(表紙画像)
アルブレヒト城(マイセン市)

(主要参考文献)
嶋屋節子「マイセン磁器誕生前史」『藝術研究 第19号』広島芸術学会
ジャネット・グリーソン著 南条竹則訳『マイセン』集英社
マシュー・スチュアート著 桜井直文、朝倉友海訳
『宮廷人と異端者 ライプニッツとスピノザ、そして近代における神』書肆心水
小林素子『近世ドイツの魔女裁判』ミネルヴァ書房

ファンレター

同時代の科学者達を拝読しました。(16~19話拝読)

 凄いなあ、ニュートンって、なんだか近代の人のイメージがありますが、この時代の人なんですね。ホイヘンスの原理のホイヘンスも! ホイヘンスが望遠鏡を作ったのは知りませんでした。長さが3.6メートルもあったんですね。それも鏡筒のない空気望遠鏡! こんなのがあったなんて~~。(空気望遠鏡は観察者が地面に立ってる絵しかなかったのですが、自宅の屋上はどこかに出展があるでしょうか、すみません細かくて)
 ニュートンとホイヘンス、彼らの光に関する論争は、その後の量子力学につながっていきますが、実験器具も充分ではないこの時代に……凄い知性だなあ。次のステップに向かう黎明期の情熱を感じます。そしてボイル・シャルルの法則のボイルさんですね! J字管の端を潰して水銀を入れる実験、懐かしい~~。
 科学の本で見たときには業績しか見えませんが、16話で皆さんが個性をもって浮き出してきて楽しかったです。それにしても、やっぱり文化とか科学って、花を開かせるには旗を振る人が必要ですよね。
 で、スピノザは全く覚えがありませんでした。(笑)科学から哲学まで幅広い分野を身近に感じさせてくれる筆力、尊敬です。そしてスピノザに関して、ゲッツと袂を分かっていくチルンハウスの生き様もドラマチックでした。それにしても、最後までわからなかった。ラ、ライプニッツか~~。
 読んでいてワクワクします。またゆっくりと読ませていただきますね。

返信(1)

「花を開かせるには旗を振る人が必要」。まさにその通りです! 毎年ノーベル賞発表の時期になると、日本の科学技術の存在感が落ちている、みたいなことが言われますが、日本ではそれだけの環境が用意されていないわけですよね。大事な税金を、役に立つかどうか分からない研究に投入するのは難しいけれど、もうちょっと何とかならないかなあと思います。
チルンハウスの生きた時代は、学者たちにとって今以上に不自由なことが多かったはずですが、それでも交友関係をさらっと書いただけでこれだけのビッグネームが出てくるのに驚きます。ほんと、この人を主人公にしたばっかりに、他の人たちのことについても書かざるを得なくなってしまって、この部分、すごく苦労しました(笑)。特にチルンハウスとライプニッツとが、生涯の友達だったことは知られていますし、触れないわけにはいかなかったんです。何より、時代の空気感みたいなものを表現したかったですし。
ホイヘンスの望遠鏡について、ご指摘ありがとうございます! 「自宅屋上」は出典がなく、私の創作です。確かにこれだけの大きさだと、屋外の地面じゃないと無理かもしれませんね。書き直すかどうか……ちょっと検討したいと思います。
またお気づきの点があったら、ぜひご指摘をお願いします。本当にありがとうございました!