文字数 295文字

またある日、男の子がいつもより早く大きな木の下にやってきました。
「今日は早いのね」
大きな木が声を掛けました。
でも、男の子は離れた場所に突っ立ったままです。
「どうしたの?何かあった?」
大きな木は心配そうにまた話し掛けると、男の子は重い口を開きました。
「ぼく、遠くに行くんだ」
ポツリ呟くように答え、大粒の涙をポロポロと流しました。
「おじいちゃんの家に、ここからうんと遠くに行くんだ」
搾り出すような悲しい声でした。
「そうだったの」
「もう会えないよ」
大きな木は言いました。
「大丈夫、私はずっとここにいるから。ずっと、ずっとね」
男の子は泣き笑いの顔で「うん」と答えると、大きな木の下で一眠りしました。
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