文字数 474文字

男の子が去って幾年かが過ぎました。
どのくらい経ったでしょうか。
町には新たな住宅街が出来、その後巨大ショッピングモールが出店。
道路が整備されて新しい建物が次々と建ち並びます。
町の景色はすっかりと様変わりしています。
大きな木がどこにあるのか、はたまた切られてしまったのか、全く分かりません。
そこへ小さな女の子を連れた男女がやってきました。
男の人は公園に一本の木を見付けると、その根元に座りました。
続いて隣りに女の人と小さな女の子も座りました。
「お父さん、ベンチがあるのに、どうしてここに座るの?」
「ここでいいんだよ」と男の人は小さな女の子に笑いながら答えました。
座ってしばらくすると男の人は眠ってしましました。
「あら、お父さんたらお昼寝してるわ」女の人は笑いました。
男の人がもたれている大きな木をじっと見ていた女の子が言いました。
「ねえ、お母さん」
「なあに?」
「この木、お話ししているよ」
「え?」
「お父さんにお話ししているよ」
女の人は笑いながら女の子に訊きました。
「何て言っているの?」
「あのね ――― 」
お父さんはとても気持ちよさそうに寝ていました。
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