第３話

　とにかく試しに部長の悪口でも書いてみるか。アパートに戻るや否や俺はさっそく糞上司の悪口を書くことにした。

『あの糞上司無駄に仕事を長引かせやがって。あんな企画書適当にやっときゃ良いだろ。どうせ取引先もあんな細かいとこなんか気にしねえよ。ちっとはコストパフォーマンスという概念でも学んだらどうだ?あんたの古臭い価値観で理解できるとは思えんがなｗｗｗ』

　ネットで誰かの悪口を書いたことは初めてではないが、嫌いなやつとは言え知り合いの悪口を書くのはやっぱり少しだけ抵抗があるな。と、金額は…流石にまだ出てないか。タバコでも吸いながら待つとするか。金額が提示されたのは10分後だった。

『今回の金額：1,500円　合計金額：1,500円』

　1500円か…まあまあな悪口を書いたつもりだったが大した額じゃないな。思い切って罵詈雑言に近い感じで書いてみるか。

『〇ねや老害上司!!あんたの仕事のできる上司を演じるのに付き合わされるのはうんざりなんだよ。注意の仕方もいちいち怒鳴るか嫌味を言うかしか方法がないのかよあんたの頭の中には!?一体どんな教育受けたらあんな時代錯誤の根性論が身につくんだよ?ああいうやつがいるせいで日本はどんどん住みづらくなっていってるんだろうな。』

　流石に書きすぎたか?ま、ビールでも飲みながら金額が出るのを気長に待つか。今度は5分で金額が提示された。

『今回の金額：1,200円　合計金額：2,700円』

　おかしい…さっきよりも酷いことを書いたつもりだが金額は低くなっている。一体どういう基準に基づいて金額が提示されるんだ?それはそうと一回あたりの取得金額が千円ちょっとなんて随分とケチな管理人だな。もっと金よこせ守銭奴!!と書いてみようかと思ったが一応管理人には見えているし、なによりこんなサイト運営しているやつに喧嘩を売ったら何されるかわからないのでやめた。

　別の日に、近所のコンビニの前で騒いでいた高校生ぐらいの集団への悪口を書いてみた。

『うるせえんだよ糞ガキども!!てめえら周りが注意しないからってやりたい放題して良いと勘違いすんなよサル以下の知能しか持ち合わせない馬鹿どもが!!あいつらが日本の将来を担うと思うとゾッとするね。おまけになんだ?「サラリーマンにだけはなりたくないよな」だって?そんな臭いこと今時ロックンローラーでも言わねえよ。だいたいこっちだって好きでサラリーマンなんかやってないっつうの!!』

『今回の金額：500円　合計金額：5,500円』

　とうとう千円切ったか。値段の設定については本当に謎だ。分かった事と言えばこの闇サイトの管理人はケチだと言うことぐらい。