第4話

文字数 987文字

 週末、俺は母親を見舞いに病院へ行った。
「母さん、元気だったか?」
「雅人、あんた連絡もよこさないでどうしたの急に?」
「別に、元気かなあって思って顔出しただけだよ。連絡に関しては悪かったよ。仕事が立て込んでて事前に伝えられなかったんだ。」
「それはそうとちゃんと食べてる?コンビニ弁当ばかり食べてない?お金の無駄遣いはしてない?」
「大丈夫だって、時間があるときは自炊だってしてるよ。最近はコンビニ弁当が多かったけど。あと金に関しては俺が稼いだ金だしどう使っても良いだろ。」
 親というのは自分が病気のときでさえ我が身より我が子の方が心配らしい。この後も母親から質問責めに遭ったが適当にはぐらかした。
「まあ元気そうで何よりだ。じゃあもう帰るわ。元気でな母さん。」
「ちょ、ちょっと、この間うえ…」
 母親は何か言おうとしてたみたいだがこれ以上拘束されたくなっかたので聞こえないふりをして病室を出ようとした…そのとき、入口の前で女性と鉢合わせした。
「うわあ!!
 相手の女性がそう言うや否や女性はしりもちをついた。
「ちょっとあんた、なに女の子を突っぱねてるの!?
 などと母親に理不尽に説教された。少なくとも俺はこの人を突っぱねたりはしてないんだが…
「だ、大丈夫ですよ寺嶋さん…それよりあなた、その、手…貸してくれませんか?その、腰が抜けちゃって…」
「あ、ああ、手ね。どうぞ、立てそうですか?」
 俺が手を差し出すと病院服を着た女性は弱々しく俺の手を掴んだ。起こすために軽く引っ張ってみたが、身体が驚くほど軽い。身長は決してそう低い訳でもないのに。
「怪我はないかい十薫(とおか)ちゃん?さっきはごめんなさいね、うちの馬鹿息子が。」
 母親が「とおか」という女性に謝罪をした。なぜ俺は悪者に仕立て上げられなきゃならんのだ…
「いえいえ、それよりあなた、寺嶋さんの息子さんだったのですね。私は上野 十薫、この病室であなたのお母様と同伴させていただいています。よろしくお願いします。」
「あ、ああ、寺嶋 雅人と申します。こちらこそ、母がご迷惑をおかけしてないでしょうか?」
「迷惑だなんてとんでもない。むしろお世話になっているのはこちらですよ。」
 十薫さん、か…たぶん俺と同い年ぐらいだろうに随分と気品のある女性だ。ウチの母親とは大違い。
「ズボラな女で悪かったね。」
 母さん、なんで俺の心が読めるんだよ…
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