5-7.軌道エレヴェータについて(1)

文字数 1,263文字

 こちらでは、作品世界において極めて重要な存在でもある軌道エレヴェータをご紹介します。
 いよいよ物語上でも軌道エレヴェータの存在感が増して参ります。今回はその1回目です。よろしくお付き合いのほどを。

 ◇

 一言で申し上げれば、軌道エレヴェータは〝文字通り星空へ届く塔〟(序章より)ということになります。
 ロケットなどの反動推進ではなく、衛星軌道まで物資を〝引っ張り上げる〟装置ですね。
 〝引っ張り上げる〟という表現を使ったのには理由があります。

 軌道エレヴェータ、実は〝宙に浮いている〟のです。

 「?」となった方もおいででしょう。
 軌道エレヴェータは、原理上は〝静止衛星〟なのです。静止衛星である本体から蜘蛛の糸のごとく昇降装置を下ろす――というのが軌道エレヴェータの原理なのです。
 もちろん静止衛星であるからには、その原理から制約を受けます。

1.重心が静止衛星軌道に乗っていること。
2.重心が簡単にズレないこと。
3.赤道上に存在すること。

 上に掲げた制約のうち、1.は大前提です。
 重心が静止衛星上になければ、軌道エレヴェータの最下部、つまり地上側の入り口を一箇所に留めておくことができません。これでは非常に不便です。
 なので、軌道エレヴェータを〝静止衛星としておくこと〟のために、他の制約が生まれます。

 2.は、エレヴェータの昇降や物資の移動で重心がズレてしまうと、これまた困るということになります。よって、衛星軌道上にある軌道エレヴェータの重心部には相当の質量を配置する必要に迫られます。ここの質量が大きいほど、末端で質量の移動が発生しても重心のズレが小さくなるからです。

 本作では、ここに宇宙港を配置しています。
 宇宙港と一口に申しましたが、軌道エレヴェータでや上げ下ろしする物資やヒトを宇宙船へ中継するだけではありません。
 モノが動くところに商機ありで、宇宙港は通称基地でもあり一大都市でもあるわけです。
 なので、宇宙港は回転居住区を持つ宇宙コロニィでもあります。

 3.は、静止衛星軌道が赤道上にしかないことから来ています。
 実は、静止衛星は惑星を巡る〝人工衛星〟の宿命から逃れているわけではありません。
 惑星の自転に対して、〝人工衛星〟としての公転速度と方向を綺麗に合わせているだけなのです。
 また、ここで気を付けなければならないのは、惑星の自転方向です。
 惑星は赤道線に沿って自転します。
 なので、〝静止衛星〟がその軌道と惑星の動き(自転)とシンクロさせるためには、実は赤道の真上に位置するしかないのです。

 このような理由から、本作における軌道エレヴェータは赤道上に配置され、また宇宙港を持つ構造になっています。

 ◇

 軌道エレヴェータに関してはまだ解説すべきポイントがありますが、ひとまずこのページではここで区切りましょう。

 本作品に関わってくださった全ての方へ、感謝を込めて。

 それでは引き続き、よろしくお願いいたします。
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