9-3.軌道エレヴェータについて(5)

文字数 1,211文字

 こちらでは、引き続き軌道エレヴェータの周辺施設についてご紹介して参ります。

 ◇

 軌道エレヴェータのプラットフォーム人工島は、単体では機能できません。
 物と情報とエネルギィの主要中継点である軌道エレヴェータには、逆を言えば〝中継すべきものを運び込み、あるいは運び出す〟という、言わば〝運用〟が不可欠です。その運用の担い手が、軌道エレヴェータ周辺にはいなくてはなりません。
 前回ご紹介した連絡橋一つ取り上げても、軌道エレヴェータを運用するために必須の施設と言えましょう。
 他にも軌道エレヴェータの機能を支える施設が、プラットフォーム人工島には欠かせません。

 物流・情報ビジネスを担うヒトの居場所、ひいては生活を補助する施設。
 コストのかかる人工島だけに、さすがに歓楽街までの余裕はありません。ですがオフィス・ビル街や飲食店などは不可欠です。

 空港。
 大気圏内では最速の輸送手段として、空路はやはり欠かせません。
 こちらも人工島ゆえのコストがかかるだけに規模の制限はありますが、プラットフォーム人工島は空港を備えています。
 規模としては長距離輸送機の受け入れが可能な2500メートル級。ただし大型機の離着陸にはギリギリで、通常は陸上都市側の空港へ回されます。軌道エレヴェータ本体を除けば、プラットフォーム人工島で最大の施設と言えましょう。

 物流施設。
 前回も触れましたが、軌道エレヴェータに対する積み下ろし用のコンテナ・ヤードが代表格です。
 コストの関係から、人工島上のレイアウトは最優先ですが、いかんせん規模が限られます。
 なので運び込まれるコンテナは地上都市側でまず整理され、その上で直通の貨物列車に載せられるのが一般的なルートになります。
 宇宙からのコンテナも地上都市側へ一旦運び出され、都市のコンテナ・ヤードで整理されます。
 もちろん例外的に直通便も存在しますが、相応の特急料金を覚悟しなければなりません。

 交通網。
 人工島は使える面積が宿命的に限られています。
 なので地上の鉄道は貨物専用、ヒトの移動手段としての鉄道網は地下鉄が基本です。
 また、道路も高架道路が多用されます。目的地の最寄りだけは地上を走りますが、可能な限り高架道路へ上がることが原則です。

 情報ジャンクション。
 情報そのものは場所を取りませんが、関連設備はそういうわけにも行きません。
 有線ケーブルとしての軌道エレヴェータには、無線接続にはない利点があります。よって有線接続網の整備ビジネスと、その設備はプラットフォーム人工島上に配置されています。

 ◇

 このような具合に、軌道エレヴェータのプラットフォーム人工島上には〝物流優先に振られた中規模市街地〟が存在します。
 徹頭徹尾人工的に設計されるだけに、地上の市街地とは様相を異にするのが特徴ですね。

 本作品に関わってくださった全ての方へ、感謝を込めて。

 それでは引き続き、よろしくお願いいたします。
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