七の色 生きること

文字数 529文字

 自分のことを「好きだ」と思えたことがない。
 絵を描くこと、文を書くこと。
 読むこと、食べること、飲むこと。
 木のクシで髪を()くこと、家の猫を撫でること。
 好きなことは色々あるが、さて自分のことはというと、断じて好きとは言えないのだ。
 大学中退、うつ病、宙ぶらりん。
 嫌いなところばかり浮かんで、好きなところは見つからない。うつのひどい時に購入した包丁(ほうちょう)は、使われないまま自分の部屋に隠したままだ。
 いや、もうはや捨て時を(のが)したというだけなのだが、当時は「自分には死ぬ勇気もないのか」とどろどろの気持ちの沼で泥まみれでもがいていた。
 しかし、さて。
 うつ発症からかれこれ二十年近く、自分はこうして生きている。してみると、自分は「生きること」は好きなのではないだろうか。
 ちゃんとしていない自分を、ちゃんと愛してくれる両親、家族。
 あまりにも恵まれた環境にいることもあるが、好きなことならみっともなくとも生ききってみるのも悪くない。
 そう思いながら、今日も私は文を書くため、パソコンの画面に向かうのだ。
 しかしこの頃座りすぎて、尻から血が出るようになった。
 うむ、こうなると運動不足も気になるぞ。週末の父の誘いを断らず、とりあえず近所の山には登るとするか!(完)
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