五の色 梳くこと

文字数 584文字

 ()くことが好きだ。
 自分の髪に、クシを入れることが好きだ。それも木のクシで。
 きっかけは何だったか覚えていない。とにかく生来の「鳥の巣頭」、いくらおしゃれに興味がなくてもこの毛質はけっこうツラい。何とかならんもんかと以前から思っていたのだが、ネットか何かで「つげのクシが良い」と知り、試しに購入してみたら……これ良い(確信)
 いやもう、びっくりするくらい梳く前と後じゃ段違い! と言っても元がボンバーなので、うるつや髪とは程遠いのだが……それでも自分史上最高の髪のツヤ! 素晴らしい!
 また材質が木なので、月一回のお手入れが必要という手間も何だか愛おしい。月に一度椿油を()ませないと、ヒビがいったりしてしまう……。その繊細(せんさい)さ、何だか深窓(しんそう)のご令嬢、白肌のお姫様のような……(語彙力)
 また正直、この梳き心地が例えようもなく気持ち良い。荒れた気持ちがすーっと落ち着いていくのである。どうしようもなく気持ちががさがさした時に、何べん救われたことだろう。
 今は月一回のお手入れを抜きにすれば、クシにもあまり触っていない。その変化は気持ちの余裕のあらわれともとれる。しかしなんだか淋しくもある。
 そういえば、いくつか木のクシがらみの掌編も書いたことがある。その話たちも、いつか世に出ることがあろうか。
 その時机の引き出しに眠っているクシたちは、そのことを喜んでくれるだろうか?
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