04 真田龍子 ~ 「自己犠牲」と「偽善」の間で

文字数 1,779文字

<キャラクター名>

真田龍子(さなだ りょうこ)

<アルトラ名>

パルジファル

<能力>

治癒(ちゆ)

<投影タイプ>

救済願望(「自傷行為」としての?)

<プロフィール>

 仏のような慈悲・慈愛に満ちた少女であり、傷ついたウツロを何かにつけて気づかいます。

 それは恋愛感情の発露だったわけですが。

 誰に対してもやさしく、他者を傷つけないようふるまいます。

 それは結局、自分が傷つきたくないという気持ちが、心のどこかにあるからなのですね。

 ウツロのように「自己犠牲」と取る者もいれば、(みやび)のように「偽善」だと(ののし)る者もいる。

 しかし龍子には、パーソナルとしてそうするしか選択肢がないのです。

 この人格の形成過程には、過去に弟・虎太郎(こたろう)を精神的に追いつめ、最悪に事態にさしむけたという、強い自責の念があります。

 何者に対しても善徳(だと彼女が思うもの)で対処しようとするのは、彼女にとり「自傷行為」といえるのかもしれません。

<アルトラ名の由来>

 龍子のアルトラ名については、かなり悩みました。

 主人公サイドはギリシャ神話系で固めるつもりだったので、「パルジファル」はちょっと不釣合(ふつりあ)いだったかもしれません。

 「パルジファル」はドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナーのオペラ(※正確には「舞台神聖祝典劇」といって、オペラとは少し違うカテゴリーに見なされるようです)の登場人物であり、「無垢(むく)な愚か者」とされます。

 パルジファルの人物像を考察すると、良くいえば「自己犠牲」、悪くいえば「偽善」によって「救済を与える者」であるという節もあります。

 この点は真田龍子のキャラクター像に肉薄(にくはく)しているかと思います。

 ワーグナーはパルジファルにイエス・キリストの人物像を投影したとも、考えられているそうです。

 ここが大きなポイントとなりました。

 というのは、ギリシャ神話において「治癒」を(つかさど)る人物なり物質なりは、あくまで「肉体的な治癒」という向きがあります。

 いっぽうキリストのおこなった「治癒」は、「精神的な治癒」という向きがあります。

 実際にというか、キリストを「最初の精神科医」と見る研究者もいるそうです。

 龍子がおこなうのは前者よりも後者の意味合いが強いと思い、「パルジファル」としてみました。

 蛇足ですが、パルジファルのほか、「ヴァルキューレ」のブリュンヒルデなど、ワーグナーには独自の「救済思想」があったようです。

 それは「自己犠牲による救済の完成」であり、彼の世界観にはつねにキリストの存在があったのだと、個人的には考えます。

 作曲家としては後輩に当たるグスタフ・マーラーも、いわゆる「復活思想」を持っていたようですが、それはやはりマーラーの世界観にも、キリストの存在が大きな影響を与えていたのではないかと思います。


<解説>

 真田龍子には、誰に対しても、自分がたとえどんなに苦しいときであろうとも、自分が思う最良の対応をしようとする、言ってしまえばわたしの「悪癖」のひとつを投影しています。

 それをよく捉えてくれる人もいれば、慇懃無礼(いんぎんぶれい)と取る人もいますし、いちばん多いのは、そんな態度を「利用」する人ですね。

 しかしながら、それが「わかりきっているのに」やめられないのです。

 もちろん人それぞれですから、「こういう態度は嫌だ」という線引きは、わたしにはできないのです。

 なかなか難儀な性格ですが、これはひょっとして、ある種の「自傷行為」ではないかと、最近とみに思うのです。

 「自傷行為」というと、一般の方はたとえば「リスカ」を想像したりすると思いますが、「爪を噛む」や「貧乏ゆすり」も、心理学的には「自傷行為」と考える研究もあるそうです。

 わたしは落ち着かないときや考えるときには、ひっきりなしに爪を噛みます。

 龍子に投影した「救済願望」も、「自分が傷つきたくない」いっぽうで、「傷つくのが目に見えている」のだとしたら、あるいは「自傷行為」なのかもしれません。

 それも結局、幼少期から少年期にかけて、尊厳や自尊心を破壊された体験にもとづくものなのか。

 とはいっても、被害者ぶるつもりはないのですが。

 ほら、これです。

 他人を傷つけるくらいなら、自分が傷つけばいい。

 そういう思考回路なのですね。

 しかしそれは結局、自分も他人も傷つけるという、目も当てられない結果につながるわけです。

 なんとも難しいことが、あるものです。
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