原罪

文字数 590文字

「やめろ! 離せ! 俺は何もしていない!」
 警官二人に両脇を抱えられながら、俺はありったけの声で叫ぶ。
「うるさい! おとなしくしろ!」
 二人の警官はそう言って、乱暴に俺を連行する。
 野次馬が集まってきた。スマホで動画を撮っているようだ。きっとこいつらも俺が犯罪者だと決めつけているのだろう。そう思った俺は再び叫んだ。
「不当逮捕だ! 冤罪だ!」
 その訴えも虚しく、俺はパトカーに押し込められた。
「お巡りさん、話を聞いてくれ!」
「ああ、署でたっぷり聞かせてもらう」運転席の警官が振り返ることなく言った。
 逆境の時こそ冷静に、それが父の教えだった。俺は高ぶる感情をどうにかして沈めた。
「オリジナル•シン」俺は皮肉な笑みを浮かべて呟いた。
 運転席の警官がルームミラーを通してこちらを見るのがわかった。
「なんだそれは?」助手席の警官が肩越しに聞く。
「聞こえましたか。日本語で言うと原罪。歌にもあるでしょ?生まれながらに背負った罪です。正に今の俺です」
 その言葉は警官には響かなかったようで、再び前を見た。
 パトカーが警察署に到着した。
「さぁ、降りろ」
「お巡りさん、一つお願いしてもいいですか?」
「なんだ?カツ丼なんかとらんぞ。あんなのはテレビだけの話だ」警官は苛立ったように言った。
「違います。冷えてきたので、上着を着てもいいですか?」
 警官は一呼吸置いて言った。

「まずはパンツを履こうか」
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