トイレの神様

文字数 533文字

「かー、ぺっ」
 トイレで用を足していたら、喉に違和感があって思わず僕は痰を便器に吐き出した。
 それがお父さんに聞こえたようで、リビングに戻ると、お父さんは「座りなさい」と言って僕を正面のソファーに座らせた。
「いいかい」お父さんは僕の目をまっすぐに見て優しく諭す。
「トイレに痰を吐いたらダメだよ」
「何で?」その理由が気になって僕はお父さんに聞く。
「日本には八百万(やおよろず)の神というたくさんの神様がいて、色々な物に神様が宿っているんだ」
 僕はお父さんの説明に耳を傾ける。
「トイレの神と言うのは右手で大便、左手で小便を受け止めるという役割なんだ」
「何それ、ばっちい!」僕は思わず叫んだ。
「だから、神様たちは誰もやりたがらない。そんな中、自ら名乗り出た神様がいて厠神(かわやかみ)となった。皆が嫌がることを進んでやるというとても位の高い神様なんだ」
「それで、何で便器に痰を吐いたらダメなの?」僕は続きが気になった。
「厠神さまは両手が塞がっているから、痰を吐かれると口で受け止めないといけなくなるからだよ」
「わかったよ、お父さん。僕もう便器に痰を吐かない」
「わかってくれたならお父さんも嬉しいよ」
「でもさ、お父さん。厠神さまはそんな仕事する必要あるの?」

「そう言われてみればそうだな」厠神は呟いた。
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