クローズドサークル

文字数 581文字

 クローズドサークル。それは推理小説の定番。外界との往来が絶たれた状況を指す。有り(てい)なセリフで言えば

「犯人はこの中にいる」

***
 それは人里離れた山荘での出来事。宿泊者は5人。2日前の朝、そのうちの一人、深見光彦が殺された。すぐに宿泊者の一人、湊かな子が警察へ通報したものの、山荘へと繋がる唯一の道は土砂崩れで二、三日通れないとのことだった。
 その晩、湊は殺された。犯人がこの中にいるのは明白だった。ロビーで全員集まって交代で眠ろうと皆で話し合ったが、宿泊者の一人、西野敬吾は「犯人と一緒にいられるか! 俺は自分の部屋で休ませてもらう」と言い、案の定翌日に冷たくなって発見された。残る

宿

は、綾辻行子と栖川(すがわ)アリス。このどちらかが犯人なのだろうか?
 いや、山荘にはもう一人いた。管理人の宮部由紀夫である。
「きゃー」綾辻の悲鳴が山荘にこだまする。
 アリスは戦慄する。
 ウー、ウー、遠くからパトカーのサイレンが聞こえてきた。
 見つかったら死は免れないだろう。どこか安全な場所に身を隠さねば。アリスは厨房の床に人が入れる収納庫を見つけた。そこに身を隠し息を潜める。
「ギシギシ」廊下の軋む音が近づく。
「ガチャ」ドアのノブが開けられた。
「出てこい!」野太い男の声が聞こえた。
 アリスは口を押さえた。
「カタッ」収納庫の蓋に手がかけられた。

「栖川アリス、殺人の容疑で逮捕する」
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