第7話 眠れない夜

文字数 872文字

 物音一つしない夜。頭の中で鳴る音がうるさい。意識しまいとするほどに意識してしまって、くわんくわんと大きな声でわめく。
 眠れない。胸のつかえと、喉奥のつかえ。漠然とした不安。
 うっすらぼんやりと見える天井の模様を、じっと、ただ眺めてたら、だんだん輪郭がゆがんできて、このまま落ちてくるんじゃないかっていう妄想にかられた。
 暗闇は嫌いだ。辺りがよく見えないのに、いや、辺りがよく見えないせいで、見たくないものが見えてしまうから。
「眠れないよ……」
 つう、っと声が零れ出る。
「聖良」
 私の声をすくい上げるみたいに、せいちゃんが小さな声で反応をした。
 あ、やば。起こしちゃったか。
 せいちゃんはベットの隣に布団を敷いて、そこで眠ってもらっている。聞かせるつもりじゃなかったのに、せいちゃんに聞こえてしまったみたい。
「眠れないの?」
「……うん」
 私は、おずおずと返した。
「そっか」
 せいちゃんはそれ以上、何も言わなかった。私も、もう一回、寝ようとして、きゅっと目を閉じる。
「ねえ聖良」
 寝たかなって思ってたら、せいちゃんが話しかけてきた。
「なに?」
「今日、ちょっと寒い」
「あー、そうかもね」
 確かに、ちょっと肌寒いかも。
「だから、一緒に寝て」
「一緒に?」
 予想外の提案だった。
「いいけど」
「ありがと、聖良」
 せいちゃんは、嬉しそうに言うと、そそくさと私の布団に潜り込んでくる。あ、すごいあったかい。
「ね、聖良。ぎゅってして」
 甘えたみたいに胸元に転がって来る。
 なあぁ、ナニコレ、めっちゃかわいいんだけど。
 返事をする代わりに、そっとせいちゃんを抱きしめた。
 ふかふかで、あったかな感触が、伝わってくる。
「おやすみ、聖良」
「うん、おやすみ」
 目を閉じる。ちょっとあまくって、落ち着く香りがする。すうっー、すうっー、と、せいちゃんの寝息が聞こえる。
 私も、せいちゃんの寝息にあわせて、呼吸をした。すうっー、すうっー、と。
 ああ、あったかいな。せいちゃん、私のこと、気にかけてくれたんだろな。
 大好き。
 だんだん、落ちていく意識の中で、そんなことを考えた。
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