第13話 商店街
文字数 1,472文字
「おおー、お店がいっぱい」
通りの両側に、色んなお店が並んでいる。たこ焼き屋さんに甘味処、パン屋さん。食べ物のお店の他にも、ガラス細工のお店とか、ぬいぐるみショップとか、お土産屋さんとかもある。
昔風の商店街の雰囲気に合わせて着物を着ている人がいたり、食べ歩きをしている人がいたり、みんなそれぞれに楽しんでいる。
「いろいろ、見て回ろっか」
「うん」
せいちゃんと二人で、商店街を練り歩く。あちらこちらで聞こえる喋り声に、お客さんを呼び込む声。それにお腹がグーっとなってしまいそうなおいしそうな香り。雑踏した場所だけれど、賑やかさが楽しい。
「お腹すいてきたー」
「だねー」
なんかいいお店ないかなと、しばらく歩く。だけど、いざこれにしようって考えると、なかなか悩むものだ。
「あれ、カレーパンのお店だって」
「へえ、カレーパンの専門店か。珍しいね」
ちょっとお店を覗いてみる。香辛料のピリッとした香りが鼻をくすぐる。
「おいしそ」
「ねー、食べよっか」
カレーパン、と一口にいっても、種類がいくつもあるみたい。そういえば、このあたりはカレーがちょっぴり有名だったっけ。
「これください」
「あいよ」
お店のお兄さんが威勢よく返事をする。
「揚げたてだから、熱いから気をつけてな」
「はーい。ありがとございます」
受け取った包み紙ごしでも、熱々なのがわかる。だけど、熱々だからこそのおいしさだ。
「せいちゃん、先たべていいよ」
「いいの」
「熱いから気を付けてね」
「うん」
カレーパンを差し出すと、せいちゃんはふうふうと、息を吹きかけた。それから、小さな口で一口、かぶりつく。さくっと、衣の小気味のいい音がはじけた。
「おいしい?」
「ほいひい」
全然言えてないのがかわいい。満面の笑みで、おいしかったんだな、って伝わってくる。
「おいしかった」
満足げに、言い直すせいちゃん。
「聖良も、食べよ」
「うん」
反対側から、かぶりつく。中からカレーの香りがふっと立ち込める。ちょっとスパイシーで、衣の若干の甘さといい感じにマッチする。二口、三口と食べると、ごろっとじゃがいもやにんじんが現れた。おお、贅沢な感じだ。
「ほら、せいちゃんも」
二人で、分け合って食べる。一緒に食べると、おいしさも二倍増しって感じだ。
「わ、これかわいい」
ふらりと入ったアクセサリーショップで、お花をあしらったヘアピンを見つけた。せいちゃんの透き通った髪色によく合いそうなブルーだ。
だけど。
「ほんとだかわいい」
せいちゃんが、同じヘアピンを見つめていた。
「ねえ、聖良とおそろいで、つけたいな」
「え……」
せいちゃんが、予想外の提案をする。私は、少し戸惑ってしまう。せいちゃんは、もういなくなってしまう。だから……。
「ね。二人旅の思い出にさ」
「……思い出、かあ」
この、楽しい時間は、限りあるもの。私がどんなにせいちゃんとずっと一緒にいたくても、それは叶わない。
せいちゃんは、私を助けてくれるために生まれた存在だ。助けてもらったからには、私も、前を向かないと。
ならば、せめて。楽しかった思い出を抱えて生きていたいな。
「そうだね、おそろいで買お」
「うん!」
さっそく、買ったヘアピンをせいちゃんにつける。思った通り、せいちゃんによく似合っていた。
「聖良も」
「うん」
パチンとつけて、鏡でチェックする。似合っているのかな、自分じゃ、よくわからない。
「聖良、かわいい」
「ほんと?」
「うん、かわいい」
せいちゃんが言うなら、そうかな。おそろいのヘアピン。お互いに顔を見合わせて、どちらからともなく、にこりと笑った。
通りの両側に、色んなお店が並んでいる。たこ焼き屋さんに甘味処、パン屋さん。食べ物のお店の他にも、ガラス細工のお店とか、ぬいぐるみショップとか、お土産屋さんとかもある。
昔風の商店街の雰囲気に合わせて着物を着ている人がいたり、食べ歩きをしている人がいたり、みんなそれぞれに楽しんでいる。
「いろいろ、見て回ろっか」
「うん」
せいちゃんと二人で、商店街を練り歩く。あちらこちらで聞こえる喋り声に、お客さんを呼び込む声。それにお腹がグーっとなってしまいそうなおいしそうな香り。雑踏した場所だけれど、賑やかさが楽しい。
「お腹すいてきたー」
「だねー」
なんかいいお店ないかなと、しばらく歩く。だけど、いざこれにしようって考えると、なかなか悩むものだ。
「あれ、カレーパンのお店だって」
「へえ、カレーパンの専門店か。珍しいね」
ちょっとお店を覗いてみる。香辛料のピリッとした香りが鼻をくすぐる。
「おいしそ」
「ねー、食べよっか」
カレーパン、と一口にいっても、種類がいくつもあるみたい。そういえば、このあたりはカレーがちょっぴり有名だったっけ。
「これください」
「あいよ」
お店のお兄さんが威勢よく返事をする。
「揚げたてだから、熱いから気をつけてな」
「はーい。ありがとございます」
受け取った包み紙ごしでも、熱々なのがわかる。だけど、熱々だからこそのおいしさだ。
「せいちゃん、先たべていいよ」
「いいの」
「熱いから気を付けてね」
「うん」
カレーパンを差し出すと、せいちゃんはふうふうと、息を吹きかけた。それから、小さな口で一口、かぶりつく。さくっと、衣の小気味のいい音がはじけた。
「おいしい?」
「ほいひい」
全然言えてないのがかわいい。満面の笑みで、おいしかったんだな、って伝わってくる。
「おいしかった」
満足げに、言い直すせいちゃん。
「聖良も、食べよ」
「うん」
反対側から、かぶりつく。中からカレーの香りがふっと立ち込める。ちょっとスパイシーで、衣の若干の甘さといい感じにマッチする。二口、三口と食べると、ごろっとじゃがいもやにんじんが現れた。おお、贅沢な感じだ。
「ほら、せいちゃんも」
二人で、分け合って食べる。一緒に食べると、おいしさも二倍増しって感じだ。
「わ、これかわいい」
ふらりと入ったアクセサリーショップで、お花をあしらったヘアピンを見つけた。せいちゃんの透き通った髪色によく合いそうなブルーだ。
だけど。
「ほんとだかわいい」
せいちゃんが、同じヘアピンを見つめていた。
「ねえ、聖良とおそろいで、つけたいな」
「え……」
せいちゃんが、予想外の提案をする。私は、少し戸惑ってしまう。せいちゃんは、もういなくなってしまう。だから……。
「ね。二人旅の思い出にさ」
「……思い出、かあ」
この、楽しい時間は、限りあるもの。私がどんなにせいちゃんとずっと一緒にいたくても、それは叶わない。
せいちゃんは、私を助けてくれるために生まれた存在だ。助けてもらったからには、私も、前を向かないと。
ならば、せめて。楽しかった思い出を抱えて生きていたいな。
「そうだね、おそろいで買お」
「うん!」
さっそく、買ったヘアピンをせいちゃんにつける。思った通り、せいちゃんによく似合っていた。
「聖良も」
「うん」
パチンとつけて、鏡でチェックする。似合っているのかな、自分じゃ、よくわからない。
「聖良、かわいい」
「ほんと?」
「うん、かわいい」
せいちゃんが言うなら、そうかな。おそろいのヘアピン。お互いに顔を見合わせて、どちらからともなく、にこりと笑った。