5話
文字数 1,833文字
こんなの間違いがあったって知らないからな。
……いや、ないな。多分ただケーキ食べたいだけだ。
……それにしても、この人は本当に美味しそうにケーキを食べている。
口の横にクリームが付いてしまっているけれど気づかないでばくばく頬張っているし。ホールごと渡したら僕の分など考えずに一人で三分の二は食べている。
先輩は昔から甘いものには目がなくて、学校の帰りに喫茶店やファミレスに寄るとパフェだったりケーキだったり砂糖まみれの甘いものを頼んでいた。
まるで恋しているような目で愛おしそうにパフェを見つめ大切に一口一口を食べ美味しそうに顔ほころばせる。それらに嫉妬してしまうほど。そんな先輩を見るのが好きだった。
当時と変わらない先輩を見ていると懐かしい気持ちが蘇ってくる。
あ、いつの間にか髪にもついている。どうやったら髪にクリームがつくんだ……。
そんな先輩の反応が可愛くて堪らない。
顔を真っ赤にして照れる先輩、嫉妬して妬いている先輩、きもいと虫けらのような目で見てくる先輩、ケーキに夢中な先輩。
今日のどの先輩を切り取っても可愛い、愛しいという気持ちが溢れてくる。
その事実が胸を締め付ける。
先輩はなんでもう僕の傍に居てくれないのだろう。
僕は先輩が居なければ何も出来ないクソ野郎で、先輩のいない世界になんて生きている意味がないのに。
そんなことを考えていると永遠先輩は真剣な目で見つめてきた。
先輩は胸に顔をうずめてきて、すごいかわいいし、いい匂いするし、髪ふわってして柔らかいし……というか、この状況は……これなんてエロゲ……じゃなくて、こんなん理性が耐えられそうにないんだけど。
先輩と居られる最後の日で、先輩が居なくなる前に先輩を覚えておきたいと思ったから。
そして僕たちは沢山唇を合わせ、飽くことなくお互いを重ね合わせた――