1話
文字数 1,022文字
息を吐くと白くなった。
12月の終わりともなると洒落にもならない寒さで、完全防備で外に出てもつま先から頭まで凍ってしまいそうだ。
僕は非リア充なので、世間から外された負け犬だ。
……本当は、僕もああやって彼女といちゃつくはずだったのに。
それはもう叶わない。
僕はクリスマスが嫌いだ。
それは、街に溢れるリア充や呑気なクリスマスソングが原因ではなく。もちろんそれもあるけれど……一番の原因は僕が今まで生きてきた中で一番の辛い出来事がクリスマスに起こったから。
僕は去年のこの日、大切な人を亡くしてしまった。あんなに愛しかった彼女はもう傍にはいない。夢島永遠先輩。僕は彼女を失った去年の冬から時が止まったまま前に進めずにいる。この先、永遠先輩を忘れることは出来ないだろう。
あの日、雪の影響で電車が遅延し、僕は二十分程待ち合わせに遅れることになってしまった。先輩に電話しても繋がらなくて、仕方なくメールを送った。そのままメールが返ってくることはなくて、嫌な予感がして急いで待ち合わせ場所に行くと救急車が囲っていて、先輩が運ばれていった。子供が赤信号で走り出すのを見ていた先輩は道路に突っ込んで子供を庇って死んでしまったと聞いた。それを知った時先輩らしいなと僕は笑ってしまった。
そうして、先輩が亡くなって僕は独りになった。
僕が居なければ今この瞬間生きていたはずだった先輩。僕が先輩をデートに誘ったりしなければ、僕が先輩を好きにならなければ先輩は生きていられたんだ。今更後悔してもどうにもならないけど毎日のように考えてしまうことだった。