3話
文字数 2,300文字
永遠先輩に連れられて辿りついた先はこの街で一番高台にある公園だった。
この公園は僕たちが学校帰りによく遊んだ公園で、小さな街の全てが見渡せる絶景スポットだった。
長い階段を上った先にある公園で、階段を上らないと辿りつけない場所にあるため昔から人は全然来なかった。
今も僕たち以外は誰もいなく閑散としている。もう空はすっかり夜に染まっている時間で、街を見下ろすとネオンの明かりがきらきらと輝いて綺麗だ。
ここは、ブランコ、ベンチ、砂場、シーソーしかない、設備としては小さな公園だ。しかし規模は小さくなく、面積の半分は大樹が占めている。
公園の近くにある馴染みのたい焼き屋さんで2人分のあんこのたい焼きを買って公園に戻る。
すると、永遠先輩は公園の中央に聳え立つ、大樹を見上げていた。
この大樹は古くからある。
この街で、大きな願い事を叶えてくれるという言い伝えがあった。実際その願いが叶った人はいるのだろうか?
そんな話は聞いたことはないけれど過去に願いが叶った人がいるからこそそんな言い伝えが出来たのだろう。何千年も前からこの場所にあるこの大樹、木は大きくずっしりとしていて、近くにいると神秘的なオーラを感じ圧倒される。
永遠先輩は……大樹を見上げて、何を想っているのだろうか。
その横顔は美しくて、儚げで、ずっと見ていたいくらい綺麗だった、声をかけるのを躊躇ってしまうほどに。
ユウくんにもう一度会うまで私は死ぬことが出来そうになかった。この世界から私がいなくなった後のユウくんのことが心残りだったんだ。そしたら、今日私はこの公園に居た。最初は戸惑ったんだけど、どうやら私は今日のこの日だけ生き返ったんだと思ったの。
僕は……泣いてしまいそうになった。
僕も、先輩にもう一度会いたいと思っていた。
あんなお別れは寂しすぎだ。
ちゃんと、この目で、この口で、先輩に感謝を伝えたいし、さよならと言いたかった。
僕は大木の前に立ち、両手を合わせ頭を下げ目を閉じた。
先輩も同じように木を拝んだ。こうして二人で木に感謝して感謝して感謝しまくって、心からの感謝をたくさん伝えた。
永遠先輩が手を差し出してくれた。僕はその手を取りぎゅっと繋いだ。先輩の手は小さくてすべすべもちもちしていて、温かかった。僕は街中でイチャついていたカップルを思い出し――
蔑む視線と本日二度目のきもいを頂いてしまった。だって本当に温かいし……。