第2話

文字数 1,059文字

 バイトも六日目になった今日。この日は初日に一緒になったオバサンとの仕事日。実はこのオバサンとは三回目なのだが、印象が変わるどころかドンドン悪化の一途を辿っていたので、なるべく接しないように注意していた。
途中、ゴミ箱のゴミの処理をしていて、二つのゴミ箱を一緒に片付けようとしていて閉めたつもりがちゃんとロックしてなかったようで二つ目を棄てた所でオバサンがやって来た。
「開いたままになってるわよ。云々かんぬん」
 おいおい、少なくとも客商売である。気付いたなら一度閉めてから言いに来いよ。私なら一度目は黙って閉める。もし入ったばかりの後輩であれば何度か続くようなら気をつけてね位は言う。まず、閉めてから言うのがモラルであり常識である。客が不快に思うかもしれない状態をまずは回避するのが前提である。
仕方ねえな。恐らく親の教育だろう。又、こいつの子孫も阿保に違いない。モラルというより知性が欠けてるのだから仕方ない…… と解決しようとした私。
それから就業三〇分前になってサッサと片付け、何かやり残した事ないかなと場内を整理していた時だった。
「やる事無いなら云々かんぬん」
 とオバサンが言って来た。これにはカチンときた私。
「何もしてないと言うのか? 」
 これから大喧嘩である。オバサンは目を逆立て逆上する。それから例の女の激情劇場が開幕した。まあ、女の業や怨みつらみ、ストレス、欲求不満、そもそも男の比ではないのだが、そもそも女を特別視してやる事など更々無い私。男女平等を謳うならトコトンやってやるに越した事はない。それがどうした? 女という特権階級の権利を主張した所でそれを全ての男が許すと思うなよ。
世の中、争い事に弱い男ばかりではないのだ。
しかし、予想以上に喧嘩慣れしたオバサンだった。正直、殴られるかと思ったぜ。
子供の喧嘩も大人の喧嘩も同じなのだが、まずは視線を逸らしてはいけない。そもそも喧嘩両成敗である事は結果なのであるが、突然、オバサンの方から折れてきた。
「ああ、スッキリした」って。
 あらら、私はいきなりマウントを取られた気になった。そもそも終息と解決、勝利を目指してはいたのだが、何とも脈略のない終わり方であった。
それからは平和な会話である。今何してるのとか奥さんは何て事を聞いて来る。
おいおい、そもそも女をホルモンのお化け位の期待しか持たない私に君の論理で迫られてもな、困る。まあ、三〇分に渡る結構、長い喧嘩だったから良しとして、そのうち弊害があれば出て来る事だろう。楽しみだ。
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