第0010撃「メタ氏、小野田の⚫︎ン⚫︎が真っ黒だったと聞く!!」の巻

文字数 952文字

1989年の6月。
美術室の窓を梅雨が湿らせていました。
小生は鳥山明のキャラクターを描くのはわりと得意でしたが、
風景画やリアルな人の顔の模写を描くのは苦手でした。
のちにラグビー部に入ることになる太っちょの男子の瀧下が、
「誰か探偵ナイトスクープ観てるやつおる?」と教室全体に向かって訊きました。

ナイトスクープは1988年3月から放送が始まって、
一年ちょっと経っている番組です。
毎週土曜の夜、上岡龍太郎が局長をしていました。
実は小生は中一になってから見始めていたので数ヶ月経っていました。
「おれも観てるで」と言いたかったのですが、
「おまえには訊いてないわ!」と瀧下から言い返されるのではないかと恐れ、
終始黙って番組を知らないフリをしていました。

6月の下旬、プール開きとなりました。
体育の授業で全力でプールを泳いだある日の帰り際のホームルーム、
突然、瀧下が皆に聞こえるように、
「小野田がパンツを脱いだとき見たけどな、
小野田のチンポ、真っ黒やったで!」と言いました。

小野田といえばこのクラスどころか、
学年全体でも二枚目とかハンサムで通っている生徒です。
化学反応でも起きたというべきか当然のように、
クラスの女生徒たちが一斉に赤面しどよめきが生じました。
しかし当事者の小野田はといえばまったく動揺をみせることなく、
バタバタとむやみに抵抗するなど見苦しい真似もせず、
爽やかに少し照れ笑いを隠す程度なのでした。
その落ち着きはらった対応に、
世の女生徒たちからの好感度は更にグンッと上がったことでしょう。

小生はといえば、
今後プールの授業を終えて教室へ戻るのが遅れれば、
男女混合に囲まれるなかで着がえるという公開処刑のようになり、
自分の粗ちんが皆に知れ渡るのではないかと非常に恐れ、
プールの授業のあとは迷うことなく、
まっすぐ必死になって猛ダッシュで一番乗りで教室へ戻り、
マジックショーのような手際のよさで着がえるのでした。

しかし同じようなことを考える輩は他にもいたようで、
アメコミヒーローのフラッシュのように光速で移動でも出来るのか、
小生がどんなに急いで走ったところで、
毎回なぜか小生よりも速く彼は帰ってきているのでした。
そして彼と顔が合うと「えっ?」とお互い同じ表情をし、
すぐにお互いどちらともなく「おう」と応答するのでした。
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