第0013撃「メタ氏、平成淀川花火大会に感動する!!」の巻

文字数 910文字

1989年7月21日、夏休みが始まった!

といっても小生は中学に入って初めての長期休暇を、
何かに夢中になって取り組むわけでもなかった。
だらだらと自分の部屋で横になって愛犬のぺるを撫でてボーっとしたり、
祖母の作った旨い昼ごはんを食べたあと、
リビングのソファーに寝そべって、
「あなたの知らない世界」をぺるとふるえながら観る日々でした。

8月5日の土曜の昼過ぎ、
かかってきた電話に出ると甲村(仮名)でした。
「花火いこうや!」
「今日花火なんかあるん?」
「知らんのか!? 今年から始まるんや、第一回目やで」
それは平成淀川花火大会というものでした。
「多坂(仮名)も夕方には来るってよ、準備するからとりあえずうち来てくれよ」

淀川で花火があるということを聞いて小生ははしゃぎ、
10分も経たずして自分と同じマンション群の三号館の甲村の家に入りました。
しかし、甲村の準備にかかる時間は長い。
しばらくシャワーを浴びて、
出たあともやたらとドライヤーをかけています。
その後も二人それぞれ漫画を読んだりして、
2時間後くらいにようやく甲村の家を出ました。

そして、マンションの地下のショッピングセンターのイブに下り、
うろうろしたり、本屋でまた漫画を眺めたりする。
そのうち多坂がひょこっと顔を見せました。
多坂の家は母親と兄がエホバの証人で、
多坂はこの日も聖書の勉強で忙しく、
花火大会へ行くことを母親がなんとか許してくれたらしい。
小生たちはイブ内にあるスーパーで、
菓子パンとお菓子とジュースを買いこんで、
わくわくする気持ちがおさえられず、
夕方6時前には淀川へ向かいました。

マンションを出て5分ほどしかかからない河川敷に着くと、
すでに見物客があちらこちらに大勢集まっていました。
3人で土手の斜面に座り菓子パンをムシャムシャとほおばる。
しばらくして「ドンッ」と1発目の火薬の音が響き、
空にラメをぶつけたようにキラキラと輝きました。
「おおーっ」と見物客らがいっせいに声をあげました。
夏の大気をばりばりと震わせて、
何百発と次々に打ち上がっては開いて散ってゆく光景に、
小生は放心状態となりました。
その日、夏休みの充実感を初めて体感したのでした。

続く。果てしなく続く……。
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